評論家が選ぶクドカンドラマ「ベスト5」 3位木更津キャッツアイ、2位不適切にもほどがある…1位は
介護ドラマの一面も
●「俺の家の話」(TBS)21年1月22日~3月26日 主演:長瀬智也 平均視聴率9・2% 碓井:「タイガー&ドラゴン」で落語家の師弟を演じた長瀬智也と西田敏行を、「俺の家の話」では能楽師の宗家の親子として再び登場させました。「タイガー&ドラゴン」の落語とヤクザをさらに展開して、能とプロレス、さらに介護を入れてきたのがすごい。よくできたホームドラマであると同時に、秀逸な介護ドラマという一面もあり、さらに、本邦初の介護ドラマと言ってもいいかもしれません。戸田恵梨香が演じる“伝説のヘルパー”が放った「介護にまさかはないんです」は名言です。ドラマの中では「要介護」と「要支援」の制度の違いから、介護をするとはどういうことなのかも見せてくれた。3年前のドラマとはいえ、まだ自分の身内や家族の介護を表立って話題にするものではなかった時に、このドラマは介護も普通のことなんだ、当たり前のことなんだと、見る側を笑わせながら物語にしてくれたことが画期的だったと思います。また、能という伝統芸能をプロレスと対比させました。ステージで客を楽しませることでは変わらないよと言ってしまうところが、クドカンらしさだと思います。 ――そしてラストとなる5本目は?
異議ではなく、やんわりとした提案
●「不適切にもほどがある!」(TBS)24年1月26日~ 主演:阿部サダヲ 碓井:昭和のおじさんが令和に来ちゃって、おじさんが笑われる話かと思ったら、そうじゃなかったことに驚きました。これだけコンプライアンスに縛られてしまった今どきの世の中に、クドカンは「ちょっと待てよ」という疑問符を投げかけるわけですが、決して異議申し立てとか肩肘張った感じではなく、笑いながら疑問符を投げつけているのが見事だと思います。まだ放送中ですが、僕が感心したのは「女性はみんな自分の娘だと思えばいいんじゃないかな?」という阿部サダヲの台詞です。コンプラ、コンプラって、規制とか規則で縛るのではなくて、何かを言う時に相手が自分に娘だったら、自分の娘に言えないようなことは言うなよ、自分の娘にできないようなことはするなよ、という提案は素晴らしい。コンプラ社会を“批判”するのではなくて、やんわりと“批評”する、笑いながら提案するドラマになっている。みんな心の中で鬱陶しいとか行きすぎているとか思っているわけですが、下手なことを言えば叩かれる、炎上する世の中に身を縮めている中、「ちょっと待って、話し合っていこうよ」というのがクドカンの思いだと思います。 ――ここで5本分は出たが、大河「いだてん~東京オリムピック噺~」は入っていない。あえて「いだてん」の評価を聞いてみた。