「大阪生まれの在日コリアン3世」が、「文在寅元大統領の映画」を観て「愕然とした」理由
在日コリアン3世で元全国紙記者の韓光勲さんは、30歳にして韓国留学を決断しました。韓国籍ではあるものの、「大阪生まれ、大阪育ち」であり、韓国語が苦手。それでも韓国に留学し、在日コリアンという立場からさまざまな発見をします。 【写真】韓国留学のきっかけになった「美少女たち」 そんな彼の発見をギュッとまとめたのが『在日コリアンが韓国に留学したら』(ワニブックス刊)という本。韓さんは留学中、現地の映画館で韓国前大統領の日常を紹介する映画「文在寅です」を鑑賞しますが、その見所のなさに驚愕したといいます。 『在日コリアンが韓国に留学したら』から抜粋してご紹介します。
関係者がべらべら話すだけ
韓国留学中に観た映画『文在寅です』を見た感想を述べたい。 ソウルの中心部で映画館を探したが、全然上映されていなかった。人気がないのだろう。仕方なく、郊外の映画館に足を延ばした。約90人が入る映画館で、観客は僕を入れて10人ほど。休日の午後4時からの上映にしては寂しい入りである。 映画は単調な作りだ。関係者へのインタビュー、文在寅の農作業、犬との散歩。これらの3つで1時間半が消化された。2時間のうちの、1時間半である。しかも、文在寅自身はあんまり話さない。人柄や功績は関係者がべらべら話す。「その話、本人から聞きたいんだよ」と思う。文在寅が話しているのは、合計して10分もなかった。 関係者が「トランプ大統領との交渉はタフだったが乗り切った」と明かすシーンがあった。こういう話こそ、当の文在寅自身から聞きたい。でも、部下が全部話す。「文在寅、もっと出てきてよ!」と思った。 このドキュメンタリー映画の目的は何だ? 文在寅を持ち上げるための「プロパガンダ映画」だろう。でも、当の文在寅が魅力的に描かれていない。人柄が伝わってこない。たしかに、関係者は「文在寅は人の話をよく聞く」とか言っている。しかし、奥さんとは庭の花をどうするかで揉めているし、人の話を聞いている感じがしない。むしろ、「周りによく話を聞いてもらっているおじいさんだな」という印象を持つ。 文在寅の政治的発言を映画から削除したという報道があったが、この際、そういう話はどうでもいい。僕は途中から、「関係者の話はいいから文在寅自身についてもっと教えてくれ!」と思いながら見ていた。 1カ所だけ、惜しいシーンはあった。農作業に疲れた文在寅が外で寝そべるシーン。文在寅の紺色の靴下がアップで映し出される。このカットはけっこう面白い。しかし、1秒にも満たないくらいで、すぐに別のカットに切り替わってしまった。惜しい。こういうのが見たいのである。 僕は「映画を見たあと、このおじいさんを好きになれるか?」という視点で見ていた。紺色の靴下のカットは、「この人も普通のおじいさんだな」と思ったが、欲を言えば、靴下に穴が空いているとか、靴下が汚いとか、なんなら素足だともっとよかった。どうでもいいシーンに思えるが、こういう細部を詰めてくれないと、いくら元大統領とはいえ、他人であるおじいさんを好きになることはできないのだ。