「いつも『死ぬんじゃないか』と思うくらい落としていた」限界迎えていたレスリング・樋口黎の体、手にした糸口
参考にしたのはボディビルダーやフィジークの競技者
新たな減量方法は、ほぼ独学で学んだ。 「栄養士の方に話を聞くと、『バランスよく食べなさい』といったアドバイスはいただける。でも、バランスのいい食事をしたからといって、痩せるわけではない」 樋口はボディビルダーやフィジーク(サーフパンツを履き、程よい筋肉量とカッコよさを争う)の競技者の減量方法を参考にした。「それらの競技は大会までの過程がものすごく大事。減量にフォーカスすると、彼らは筋肉量を落とさずに脂肪だけを落としていくのがものすごく上手だったんですよ。それは、つまり減量しても脂肪だけを減らして体重を落とせるということなので、レスリングと重ね合わせても、いいパフォーマンスができることにつながる。やり方? もうだいたいはユーチューブとかに出ていますよ」 それ以来、減量で失敗したことはない。いまでは減量についてのコツもサラリと解説できるようになったほどだ。 「減量は短距離走ではなく、すごくダラダラと走り続けるような超長距離走のほうが大事。ガーッと(ピッチを)上げるだけでは脂肪は燃えない。心拍数をなるべく上げないようにして、時間をかけカロリーを使うことが大事ですね」
「一つずつ返していこうと」前哨戦での圧巻の優勝
今年6月にはオリンピック前哨戦と位置づけるハンガリーで開催された世界レスリング連盟のランキング大会に出場した。エントリーした階級は57kg級だったが、+2kgまで許容されるルールの中、樋口は3試合連続テクニカルスペリオリティ(10点差以上の差がつくと、コールド勝ちとなるルール)で優勝した。 勝負のクライマックスは欧州王者であるアリアッバス・ルザザデ(アゼルバイジャン)との準決勝。第1ピリオド開始早々、樋口はルザザデの片足タックルからの再三にわたるローリングによって、いきなり8点も奪われてしまったのだ。あと2点とられたら10点差がつくので、いきなり徳俵まで追い込まれた格好だった。 しかし、その後樋口はまったく慌てることなく反撃を開始。やられたら同じ技でやり返せとばかりにローリングで相手をクルリクルリと回し続け、終わってみれば19-8とスコアを大きく引っくり返した上で逆転勝利を収めた。 「(大差をつけられても)一つずつ返していこうと思いました」