「自分の夢すら、いつか忘れる」…米国教授に学ぶ「数々の起業家たち」が陥ってきた「落とし穴」を回避する方法
近年注目が集まっているアントレプレナーシップ。「起業家精神」と訳され、高い創造意欲とリスクを恐れぬ姿勢を特徴とするこの考え方は、起業を志す人々のみならず、刻一刻と変化する現代社会を生きるすべてのビジネスパーソンにとって有益な道標である。 【漫画】頑張っても結果が出ない…「仕事のできない残念な人」が陥るNG習慣 本連載では、米国の起業家教育ナンバーワン大学で現在も教鞭をとる著者が思考と経験を綴った『バブソン大学で教えている世界一のアントレプレナーシップ』(山川恭弘著)より抜粋して、ビジネスパーソンに”必携”の思考法をお届けする。 『バブソン大学で教えている世界一のアントレプレナーシップ』連載第62回 『「自分は、何をしたいんだ?」…”闇落ち”した経営者たちに「共通して」欠けているモノ』より続く
最終目標=夢を実現するために
起業するとき、誰でも最初は「夢」を持っています。世界を変えてやろう、〇〇を実現しようという夢です。ところが、事業が軌道に乗ってくるタイミングで、ぶれてしまうことがよくあります。 最終目的=夢を実現するために、そこに至る過程を分解し、それぞれの過程で目標を設定し、一つ一つそれを達成していくのですが、その過程で「目標を見誤る」ことがあるのです。間違えたなら、修正すればいいのですが、その修正がうまくいかない場合があります。 たとえば、「健康で長生きしたい」と考えたとき、そのために「体重を適正に保とう」という分解した小目標を設定したとします。これを実現するために「適度な運動を継続していく」という手段を講じます。 ここで起こりがちなのが「運動」という手段が目的化することです。「毎日、何キロジョギングすること」が目的となってしまい、体調が少々悪くても、足が痛くても、「走らないと」という義務感に囚われて、走ってしまう。その結果、体を壊す。見事に手段が目的化して、本来の目的を見失ったケースです。
いつのまにか手段が目的に
ビジネスでも、こうしたことはよく起こります。たとえば、CO2排出量を減らしたい、地球温暖化を食い止めたいという大きな目的を持っていたとします。その一手段として、太陽光発電を事業化しようとして起業した会社が、いつのまにか「ただ太陽光発電パネルを売ることだけに執着してしまう」といったことが起こりえます。 もしかしたら、太陽光発電パネルの製造工程で大量のCO2排出が起こっているかもしれない。そのことは無視してしまいます。CO2排出量削減が目的だったのに、太陽光パネル普及にすり替わってしまったのです。 飼い主の手を離れて保健所で処分されてしまうペットの命を救いたいという夢を持って、ペットのマッチングサービスを事業化したとします。ペットを飼いたい人は多く、利益が出るようになりました。しかし、やはり人気のペットには偏りがあります。 基本的には最低限の手数料でペットをマッチングしていたのですが、人気の種類のペットは少し手数料を高く設定して、会社の運営に役立てようと考えました。すると大きく利益が出るようになってきました。その結果、一部の人気の種類以外のペットについて、従業員が積極的にマッチングしなくなっていきました。 これも、処分されるペットを減らしたいという夢から、ペットのマッチングサービスという手段を講じ、事業化したものの、「マッチングによる利益」が目的化してしまったケースです。