これはたしかに、いままでになかったウエアだ!【ケンロウP.S.アノラック】
これはたしかに、いままでになかったウエアだ!【ケンロウP.S.アノラック】
PEAKSが独自開発したウエアやギアを実際にフィールドでテストしてみるこの企画。 第1回は、最新ポーラテック・パワーシールドを使用した意欲作、この一品だ。 編集◉PEAKS編集部 文・写真◉森山憲一
今回テストしたのはコレ!ケンロウP.S.アノラック
クライマーの中島健郎さんとPEAKSがコラボして開発したアノラック。素材にポーラテック・パワーシールドを使い、ジャージのような着心地のよさと防風性・耐水性の高さを両立している一着。今回テストした森山は身長172㎝/体重68㎏。サイズはMでちょうどよかった。
PEAKSがほかのウエアメーカーと同じようなものを作っても意味がない
「PEAKS、ずいぶん振り切ったな! 」というのが、ケンロウPSアノラックを手に取ったときの第一印象である。 売れないといわれるプルオーバースタイル。胸ポケットひとつしかないシンプル機能。商品としては、もう少しなにか足したくなるのが普通だ。 しかしこれはクライマーの中島健郎コラボモデル。中島さんの豊富な登山経験から必要と思うことと必要でないと思うことを、ウエアの形に落とし込んでいったもの。売れないとされるプルオーバーだが、登山経験が深い人ほどこれを好む。ハンドウォーマーポケットも袖口のベルクロフラップもなくていい。全部私も同意である。ところが、こういうものは市場にあまりない。シンプルすぎて売りにくいからだろう。でもだからこそ価値がある。PEAKSがほかのウエアメーカーと同じようなものを作っても意味がない。だからこれでいいのだ。 実際にこれで山を歩いてみると、シャツを着ている感覚である。防水透湿素材特有のシャリ感がわずかにあるものの、非常にしなやかなので動いても違和感はない。ほかにあまりない着心地であるが、強いていえば薄手のソフトシェルに近いだろうか。 本体素材はポーラテック・パワーシールド。ソフトシェルやレインウエアなどによく使われる素材だが、ケンロウPSアノラックに使われているのは、昨年リニューアルした最新型のパワーシールド。旧来のパワーシールドがもっていた防風性に加え、耐水圧やストレッチ性が大きく向上しているという。たしかに、この着心地のナチュラルさには、ストレッチ性の高さが大きく寄与しているように感じる。 歩き出しは少し寒かったのだが、登りに入ると体が温まってきて、わずかに汗がこもる感じがする。だが脱ぎたくなるほどではない。絶妙なところを保ちつつ稜線へ。 周囲が開けると冷たい風が体に当たる。フリースなら一気に冷えるところだが、ここにきてパワーシールドの本領発揮。少しスースーするくらいだ。休憩で腰を下ろしても10分くらいなら防寒着は不要。そのまま歩き出していける。 結局、下山までケンロウPSアノラックはずっと着たままだった。「動きやすいジャージのようなウエア」。中島さんが想定していたコンセプトは、こういうことだったのかと納得した。 これは雪山登山のミドルレイヤーとして使っても具合がいいだろうし、秋から春にかけての時期にシャツ代わりとしてもいい。かなり尖った仕様のウエアではあるが、活用範囲はけっこう広いと感じた。