自民党総裁選と「はだしのゲン」をつなぐ不等式
ああ、がっくりだ。 ……尊敬すべき日経ビジネス電子版の名コラムニスト、故・小田嶋隆流に書きだしてみる。ちなみにどういうわけか、私には「隆」という名前の幼なじみが3人もいるのだが――まあそんなことはどうでもよろしい。 ああ、がっくりだ。 自由民主党の総裁選挙と、立憲民主党の代表選挙のことである。党員が選ぶ選挙であって、どちらの党員でもない私には選挙権はないのだが、それでも今後の日本の帰趨(きすう)を占う選挙なので注目しないわけにはいかない。 自由民主党総裁選は9月11日現在、それぞれ以下の人々が、立候補の意志を示している。告示が9月12日。9月27日に投開票というスケジュール。現状で数は多いが、推薦人が集まらずに立候補を断念する人も出るだろう。 青山繁晴 石破茂、加藤勝信、上川陽子、小林鷹之小泉進次郎、河野太郎、斎藤健、高市早苗、林芳正、茂木敏充(五十音順、敬称略、以下同) 一方立憲民主党代表選は9月7日告示で以下の4人が立候補した。9月23日投開票である。 野田佳彦、枝野幸男、泉健太、吉田晴美(立候補届け出順) で、何にがっくりしているかといえば、これらの人々の消費税に対する態度だ。報道される各人の発言は以下のとおり(今回、消費税関連の発言のない人は割愛した)。 ・自由民主党 青山繁晴:「消費税を減税して消費者の購買力を高めるべきだ」 石破茂:「消費税減税は今のところ考えていない」 小泉進次郎:「消費税増税について、私の政権では考えない」 ・立憲民主党 野田佳彦:「安易な消費税減税はしない」 枝野幸男:「消費税を単純に減税したら日本の財政はパンクする」 泉健太:「経済が悪化した時に消費税率に触れるのはあり得る。現在も選択肢だ」 吉田晴美:「消費税の食料品への非課税を」 青山議員ははっきり消費税減税と言っているが、推薦人が集まらず苦闘していると報道されている。立民代表戦で、部分的にでもはっきり減税と言っているのは吉田晴美議員のみだ。 総裁選にせよ代表戦にせよ、国の選挙ではないので、基本は何を言っても道義的以外の形で責任問題になることはないだろう。それでも消費税減税とか廃止とかが出てこないのは、ここに発言が出た候補以外もまた現状のまま、ないしは消費税増税がよいと思っているのだろう。実際、期間を広げて検索をかけると、過去に消費税増税を言っている候補もいる。 ●技術系の人間の経済理解 大間違いだ。消費税……というか逆進性を持つ税制はすべて大間違いで国を滅ぼす。本連載で何回か日本の現状を「まっさかさまにおちてでざいあ~」と書いたが、その根本には消費税があり、また消費税、さらには社会保障負担に代表される逆進的な国民負担がある。 お、松浦、経済には素人の航空宇宙系コラムニストの分際で大きく出たな、と思う方もおられるだろう。おっしゃるとおりだが、自分なりに学び、考えた、現時点での結論だ。 タネ本はもちろんある。著名な経済学者の有名な研究及びその研究をまとめた著書から示すことができる。その本は世界的な大ベストセラー本なので、ひょっとするとあなたの本棚にもあるかもしれない。 トマ・ピケティの『21世紀の資本』(2013年、邦訳は14年)だ。 『21世紀の資本』の主張は簡単で、「r>g」という不等式だ。 rは資本の平均年間収益率。これは資本が資本を生む割合、もっと簡単に言えば投資により金が金を生む速度だ。そしてgは経済成長率である。 このことは「金が金を生む収益は、労働の生む収益より大きい」とも言い換えられる。その意味は深刻だ。「資本主義においては金持ちは金を持つが故にどんどん富み、運用する資産がない低所得層との格差がどんどん開いていく」ということだから。