プロ野球を声で支える鈴木あずささん 「いじりアナウンス」の原点は 西武はホーム最終戦
杉谷選手への「いじり」、言葉が降りてきた?
――数年前には、元北海道日本ハム・杉谷選手への愛ある「いじりアナウンス」が話題になりました。 当時は放送室がグラウンドレベルにあって、窓を開ければそこに選手がいる状態でした。2014年7月の日本ハム戦で、「杉谷選手、バッティング練習あと10分です、と言ってください」と、杉谷選手本人から頼まれたんです。決まっていない言葉は話しづらくて、その日は言えなかったんですけど、「なんで言ってくれないの?」みたいなリアクションをされて、「やればよかったかな」と悩みました。 次に杉谷選手が1軍に上がったのが9月で、モヤモヤを吹っ切りたくて当時の上司に相談したら、「ちょっと言ってみれば」と。軽めに言ったら、グラウンド中の人が振り返って、びっくりしました。それがきっかけですね。 グラウンドにいた(北海道日本ハム元監督の)栗山英樹さんや(当時コーチの)白井一幸さんからは「次、何を言うんですか?」とか、「やってるよ、言わないの?」「もう終わり?」と聞かれるようになって。本人とのやりとりだけだったら、すぐやめたと思うんですけど、相手球団の首脳陣から言われたので続けた面もあります。 ――「大泉西中学校出身の杉谷拳士選手がバッティング練習を行っております」「シーズンオフをもしのぐ活躍で、シーズン中にもかかわらずとっても目立っています」「内野も外野もベンチも守ります」「人気も検索数も上昇中の杉谷選手のバッティングに、皆様どうぞご注意ください」など、さまざまな「いじりアナウンス」が今もYouTubeに残っています。2022年秋に杉谷選手が現役を引退するまで続きました。 ちゃんと考えて言ったのは1、2回で、あとはネタだけ用意して、その場の様子を見てしゃべっていました。勝手に言葉が降りてくるときもあって、引き出してくれるような不思議な選手でした。 ――ほかの選手から頼まれて、アナウンスをすることはありますか。 基本的にないですね。ライオンズの選手から冗談で「いつになったらやってくれるんですか?」と言われたことはあります。ビジター球団のコーチ陣から「この選手をいじって」と言われたときは、「本人は?」と聞きます。本人もOKだったら考えますけど、いったんは「杉谷さんの許可を取ってください」と言うことにしています。杉谷さん自身が他の球場では頼まなかったそうで、ちょっと浮気できないな、と(笑)。