新国立劇場『ピローマン』出演者座談会「観終わった後に誰かと語り合いたくなる作品」
――『ピローマン』、これだけさまざまな要素で構成され、観客側の受け取り方も千差万別になるであろう舞台作品も稀有だと感じます。そこで、出演者の皆さまそれぞれが考える本作の“推しポイント”を語っていただけますでしょうか。 成河 まず、チケット代については強くプッシュしたいです。今回は3つの席種がありますが、当日販売のZ席は1650円で1番高額なA席でも7000円台。さらに当日券は学生証の提示でA席とB席が半額になる。 木村 この舞台を映画館と同じくらいの値段でも観られるのは凄いことだよね。 成河 そう!A席B席Z席と値段に選択の幅があるのも素晴らしい。このとんでもない作品をこれだけのメンバーで上演してこのチケット代、いち出演者として誇りに思っています。 斉藤 知人や友人から「『ピローマン』って怖い話なんでしょ?」とよく聞かれます。確かにダークな面もありますが、いろいろな意味で面白いし、誰もが“あるある”って感じられる作品だとも思います。今さらですが、あの内容をこの人数でやるの、出演者としてもちょっと信じられません(笑)。 那須 ダークなだけではなくて笑いどころもたくさんあるし、怖さや切なさ、優しさやファンタジーまですべてが混在する作品だと思っています。あと、今この時代に(劇中に出てくる)“物語”がどういう意味を持つのか、老若男女、さまざまな世代の方に体感してほしいですね。 大滝 演劇ならではの楽しさがダイレクトに伝わる作品です。舞台を挟む形で対面式の客席が組まれますので、そこを体験していただくのも楽しいと思いますよ。 松田 僕も絶対に観ようと決めています。 木村 え、出演者……。 斉藤 第三の目…? 松田 こんなに凄い作品、出たいに決まっていますけど、同じくらい観たい気持ちでいっぱいです。稽古を重ねるにつれ、その想いがどんどん強くなってきていますね。だから僕は本番も絶対に観ます! 成河 おお、離見の見だ! 木村 その気持ち、わかる!終演後、お客さんもしばらくは放心状態のようになると思うし、観劇後にそれぞれの解釈をシェアしあったらきっと面白いですよね。観終わったら誰かと話したくてたまらなくなる作品ですから。 成河 さまざまな視点があると思いますが、『ピローマン』はマクドナーがメッセージなんて言葉を笑い飛ばすような勢いで書いた戯曲だとも感じています。だから肩に力を入れた状態ではなく、軽い気持ちで劇場に来ていろいろな人に演劇をより身近に感じてもらいたい。1万円以上のチケットだとそれが難しくなってしまいますが、今回はジャケ買いが可能な価格帯もあります。だからこそ「これ、本当に面白いの?」って半信半疑の人にこそ観てほしいです。 取材・文=上村由紀子(演劇ライター) 撮影=引地信彦 <公演情報> 『ピローマン』 作:マーティン・マクドナー 翻訳・演出:小川絵梨子 出演:成河 木村了 斉藤直樹 松田慎也 大滝寛 那須佐代子 プレビュー公演:2024年10月3日(木)・4日(金) 本公演:2024年10月8日(火)~10月27日(日) 会場:新国立劇場 小劇場