東京大学の学費値上げは本当に必要なのか? オンラインによる「総長対話」で浮き彫りになった驚くほど閉鎖的な体質
オンラインによる形式的な「総長対話」の実態
こうした経緯を踏まえると、突然「学費値上げ」を検討しなければならないほど東京大学の経営は逼迫していないという結論に達する。それでは、なぜ必要性がない学費値上げを東京大学は検討しているのか? 冒頭に紹介した国立大学法人法改正の経緯を踏まれば、岸田内閣によって「稼げる大学」が推し進められ、国内で最も影響力の大きい東京大学が踏み絵を踏まされていると推測する。 要は、本当は東京大学自体は慌てて学費値上げする必要はないが、学費値上げの動きを全大学に波及させる起爆剤としての役割を現政権から期待されているのではないか。 だからこそ、(1)で指摘した学生側の深刻な不利益を冷酷に無視し、(2)で指摘したように不透明かつ閉鎖的なプロセスを貫くのだろう。そして、こうした大学側の異様で不自然な姿勢は総長対話でさらに浮き彫りとなった。 6月21日19時~21時ごろ、約2時間にわたって東京大学で総長対話(藤井輝夫総長と東大生が学費値上げ問題について対話する場)が開催された。しかし、以下の通りその内容は「対話」とはほど遠い内容であった。 ・学生側が事前に要望した「対面での複数開催」を大学側は頑なに拒み、「オンライン(zoom)による1回のみの開催」を強行。 ・指名により発言を許された学生はわずか13名。 ・学生が指摘した数々の本質的問題に対して、藤井総長は「検討する」等の回答を連発。(「検討」発言は少なくとも15回以上にわたる) ・大学側はzoomのホスト権を持つことで、不都合な発言を続ける学生を司会者(河村知彦執行役・副学長)がミュートしたと見られる一方的な進行が散見。 第三者である筆者から見て、大学側にとって総長対話は「学生と対話した」という既成事実づくりが目的だったと解釈せざるを得なかった。また、この総長対話に関するテレビ・新聞の報道の中には、こうした開催形式や進行の問題点を具体的に指摘したものは少なかった。
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