「戦略になんの具体性もない」 シャープ、株主総会で厳しい声 会長職に鴻海の劉・董事長
シャープは27日、堺市内で定時株主総会を開いた。2期連続の最終赤字や大型液晶パネルの生産停止に対し、「経営を立て直すための戦略になんの具体性もない」、「独創的なものを作るという原点に返るべきだ」と厳しい声が相次いだ。 社長兼最高経営責任者(CEO)に就く沖津雅浩副社長と、親会社の鴻海(ホンハイ)精密工業出身で、この日まで社長兼CEOを務めてきた呉柏勲(ごはくくん)氏を取締役に再任する議案を可決した。 呉氏は、令和6年3月期連結決算は純損失が1499億円で、2年連続の赤字となったことに「深くおわびする。誠に申し訳ない」と謝罪した。沖津氏は「私は現場が大好きです。シャープ全員が一つになって中期計画の方向に進んでいきたい」などと話した。 シャープは4年に大型液晶パネルを生産する「堺ディスプレイプロダクト(SDP)」(堺市)を再子会社化したことで経営が悪化した。今年5月の経営方針説明会では、SDPの生産停止とともに、家電などのブランド事業を中心とした事業構造に転換する方針を示した。この日も、沖津氏は、SDPの跡地活用について「AI(人工知能)データセンターへの転換を図るべく、複数のパートナー企業との協業を開始している」と説明した。 一方で、沖津氏が新社長に就く人事は26日に急きょ発表される異例の事態となっており、総会で沖津氏が主に質疑に応じたことに対して、株主からは「厳しい経営状態なのにこれまでかじを取ってきた人間が答えないのはおかしい」との意見も出た。 総会後の取締役会では親会社の鴻海の経営トップである劉揚偉(りゅうようい)・董事長が、シャープの執行権限を有しない会長職に就任することが決定。中長期の成長に向けた連携を深めていくとしている。 また、呉氏は代表取締役副会長に就任した。(桑島浩任)