「自分には関係ない」「家族関係壊す」選択制夫婦別姓を取り巻く日本人の勘違い、「虎と翼」が問う法律の主体
国を超えた商業活動が活発になった結果、旧態依然とした制度が邪魔になっているのだ。提案を却下してきた政府も、いよいよ重過ぎる腰を上げるかどうか。 ■法律を理解するのにドラマが果たす役割 その成り行きを、他人事のように見ていてよいのだろうか? この制度は何より、私たちの人生に関わる。別姓を選びたい男女が尊厳を脅かされ、不便を強いられているだけではない。 また、ほとんどの家族が夫の名字を名乗るよう強制される制度は、夫を戸主のごとく一家の代表と見なし、男性優位を当たり前とする価値観を温存する。
法律は難解で膨大な数がある。専門家でないと理解しづらいものは多い。そんなときに手助けになるのが、法律に関わるドラマである。何しろ面白くて具体的な事例が次々に紹介されるからだ。 その中でも、時間とコストをかけて半年間じっくり見せる朝ドラの『虎に翼』は、法律が庶民にも身近な存在と明快に伝える。折よく先週の放送が、第2次世界大戦後の民法改正審議を取り上げていた。 日本国憲法に合わせるため、民法を改正するべく設置された司法省民事局民法調査室で働く寅子。戦時下に同情の形を採ったマタハラを受け、生涯の仕事と決めた弁護士を妊娠時に辞めて以降、彼女は「はて?」を言わない。
上司の久藤頼安(沢村一樹)には、食い足りなさから「謙虚だね」と言われてしまう。守旧派の帝大教授の神保衛彦(木場勝己)が、民法改正でイエ制度をなくせば日本の美風が消え大変な混乱に陥る、と同意を求めた際の返事も煮え切らない。 ■法律は庶民の暮らしに直結する存在 しかし、その後大切な人たちの言葉と日本国憲法の条文に背中を押され、自分らしさを取り戻していく。民法改正審議会で神保に対し、旧民法と旧憲法が規定した、個人の尊厳を犠牲にするイエ制度の保護は「大きなお世話」だとはっきり言う。その後審議はまとまり、結婚後は、夫婦のどちらの名字を名乗ってもよいことになった。