じつに奇抜な「トサカ」。残念ながら、新種の証拠にはならなかった…なんと、日本の研究チームが判明させた「アラスカを闊歩した越冬恐竜の本当の名前」
【シリーズ・小林快次の「極北の恐竜たち」】 リード部分今から何千万年も昔に、地球の陸上に君臨していた恐竜たち。シダ類やソテツ類の茂った暖かい地域で暮らしていたイメージがあるかもしれないが、彼らは地球上のあらゆるところに進出していた。南極大陸からも、北極圏からも恐竜の化石は発見されているのだ。 【画像】北極圏にいた「冬越し」していた恐竜の「かなり特殊な口とあご」 この連載では、北極圏のアラスカで15年以上にわたって調査を続ける筆者が、極圏での厳しい環境で、どのように恐竜たちが暮らしていたのか、その生態と進化の謎に挑むーー。 今回は、ハロルドサウルス科の恐竜の“おしゃれ”ともいうべき「特徴的なトサカ」を手掛かりに、アラスカの恐竜産地「リスコム」で見つかった恐竜たちは、どのような種だったのかを考察していこう。なんと、その特徴を追っていくと、彼らが越冬していた証拠としても、通じるものが見えてくるのだ。
おしゃれなハドロサウル科
さて、今度はハドロサウルス科の「おしゃれ」に注目しよう。 「おしゃれ」というのは、子孫を残すうえで非常に重要なことである。少しでも異性から注意を引くように、おしゃれをする。また、他の個体と敵か味方かということを示すうえでも役に立つ。ハドロサウルス科というのは、頭にさまざまな形をしたトサカを持ち、そのトサカで、交配相手にアピールしたり、他の個体とコミュニケーションをとっていた。 このトサカの構造を詳しくみると、ハドロサウルス科の中では、「空洞のあるトサカ」と「中が骨で詰まっているトサカ」の2つに分けることができる。これらの特徴によって、“科”を二つの“亜科”に分けることができる。それらの名前は、ランベオサウルス亜科とサウロロフス亜科と呼ばれている。 空洞のあるトサカを持つランベオサウルス亜科 ランベオサウルス亜科で代表的なものに、パラサウロロフスという長く湾曲し、後方に伸びているトサカを持っている恐竜がいる。子どもたちにも人気のある恐竜である。 大きなトサカと呼ばれる構造を頭に持つランベオサウルス亜科には、トサカが大きく後ろに大きく伸びるパラサウロロフスの仲間、若干上に伸びているリーゼントのような形のトサカを持つランベオサウルスの仲間、半月状の形をしたトサカを持つコリトサウルスの仲間などが存在する。 パラサウロロフスの仲間:大きく後ろに大きく伸びるトサカ ランベオサウルスの仲間:若干上に伸びているリーゼントのような形のトサカ コリトサウルスの仲間:半月状の形をしたトサカ これら全てのトカサは、中が空洞になっており、音を共鳴させることができた可能性があった。また、その形は飾りとしてコミュニケーションに使われていた。 空洞ではないトサカを持つサウロロフス亜科 もう一つのサウロロフス亜科もトサカを持っているものがいるが、ランベオサウルス亜科よりも地味な印象がある。トサカの形はさまざまだが、その中は空洞ではなく、形による飾りとしてコミュニケーションの手段として使われていた。 たとえば、サウロフスという恐竜には、パラサウロロフスのように、後ろに伸びるトサカを持つが、その中は空洞でない。また、エドモントサウルスの頭骨には、まったくトサカがない。骨には、トサカの痕跡はないが、ミイラ化された化石には、肉質のトサカが保存されており、これも飾りとして使われていた可能性がある。