高橋優インタビュー/主催フェス開催間近「一緒に楽しい時間にしようっていう意味がどんどん深くなっていっている」
――そういう意味では、もしかしたら大抵の日本人は、オンモードなのかもしれないですね。 そうですよね。僕の場合は、仕事と言いつつ、好きな音楽をやっているわけだし、曲作りだって、そもそもそれがやりたいからやっているのであって、それが趣味だと言えなくもないというか。でも、例えばうどんが大好物だからといって、毎食毎日うどんだったら、それはさすがに辟易とするわけで(笑)。逆に苦手だったパセリを食べてみようかなって思ったりするかもしれない。だから僕で言ったらカメラを始めてみたり、もともと趣味だった映画を観たりしてるんですけどね。 ――やっぱり締切があるかどうかっていうのは、仕事か趣味かのボーダーラインになるんじゃないですか? ああ、なるほどね。ライターさんっぽい考え方ですね(笑)。やっぱり締切って意識せざるを得ないものなんですか? ――まあそれこそ映画館で映画を観ていても、明日締切かっていうのは確実に頭の片隅にはあって、だからずっと首根っこを掴まれてるような感じですね。 へー。 ――そういう感覚はないですか? 曲作りに関して言うと、自分がワクワクして作ったものじゃないと、誰も得しなくなっちゃうなと思ってて。だから、この日までに作ってくださいっていう、“この日”っていうのを極力意識しないように僕はしていますね。すごく大人としてダメなこと言いますけど(笑)、一週間遅れても、美味しいもの食べたくないですか?(笑)。締切に間に合ったまずいものよりも。 ――あははは! 作った人が納得した味が出ているものが、結局は周りの人も幸せにするって僕は思っちゃうんですよね。そりゃあ僕もクリエーターですから、締切は絶対に守らなきゃいけないって思ってるんですよ。でもその感覚っていうのは、小学校のときに感じた、こうした方が先生が喜ぶんだろうなっていう感覚に近くて。宿題ならそれでもいいんですけど、楽曲となったら、締切を設定した人たちの先にリスナーのみなさんが待ってくれているわけで、どうしてもそっちのことを考えてしまうんですよね。結局リスナーの皆さんがどう思うかがすべてなわけですから、「うーん、あんまり手応えも感じてないけど締切だからまあこれでよしとするか」みたいなものを出してしまったら、それは絶対リスナーのみなさんに失礼だし、評価もされないと思うんです。ということは、それは締切を設定した人たちにとっても損をすることになりますよ、という考え方(笑)。「なんで私たちは締切なんてものを作ってしまったんだ! そのせいで、駄作を作らせてしまっていたなんて!」と後悔するくらいのことに僕の中では変換して、ひたすら自分の納得いく楽曲を仕上げることにワクワクしながら集中しています。 ――なるほど(笑)。 まあ、いろいろ言いましたが(笑)、一方で、締切を設定して待ってくれている人たちがいるっていうのは本当にありがたいと思っています。だって、さっきも話した路上時代、僕はここを長く経験しているので、それは誰も待っていないのに曲作りをしていた時代でしたから。もしかしたら路上で立ち止まってくれるかもしれないっていう薄い希望だけで曲作りしているのって、やめようと思えばいつでもやめられるじゃないですか。そこが自由でもあるんですけど……そうか、あの頃は締切に憧れてたんだなー(笑)。『サザエさん』に出てくる小説家の伊佐坂先生を見てさえ、いいなと思ってたくらいですからね(笑)。 ――編集者を控え室で待たせて机に向かっている姿が(笑)。 そうそう(笑)。だから矛盾するようですけど、締切があるということはありがたいと思っています。だからそこに対してもモチベーションがあるのも事実です。ただ、でもね――っていう(笑)。