敵将・三浦ヤスが過保護育成に反対。「久保健英よ、騒がれて強くなれ!」
自分自身への不甲斐なさが、はからずも沈黙を導いてしまったのか。時間にして3秒ほど。FCバルセロナが魅せられた15歳の逸材、久保建英が言葉を詰まらせる場面があった。 「何本もシュートを打って決められなかったのは……」 ここまで振り返った直後に、胸中に渦巻く思いを必死になって整理する。そして、短い言葉を紡ぎながら1‐2の惜敗を受け止めた。 「……悔しいです」 ホームの江東区夢の島競技場で、鹿児島ユナイテッドFCと対峙した2日のJ3第4節。FC東京U‐23のFWとして先発フル出場した久保は、両チームを通じて最多となる4本のシュートを放った。 前半32分には左サイドで相手DFと競り合い、クリアをタックルで阻止。こぼれ球を拾って猛然と相手ゴールへ迫ったが、利き足の左足から放たれた一撃はゴール前を通過していった。前半終了間際にも二度にわたって左足を振り抜くも枠をとらえられず、右手でピッチを叩いて感情を高ぶらせた。 極めつきは後半39分。味方からのパスを受けるとあえて相手に体をぶつけ、反動でドリブルを加速させてゴール右側へ侵入。相手4人を引きずりながら今後は右足を振り抜いたが、強烈な弾道はDFに当たってサイドネットへ反れてしまった。 「J3であまり結果を残せていなかったというのもありますし、今日は前半のはじめからけっこう押し込んでいて、(ゴールの)チャンスじゃないかなと途中から感じていた部分もあったので。決めるべきところだったので、外して不甲斐なかったです」 J3に参戦中のFC東京、ガンバ大阪、セレッソ大阪のU‐23チームは、GKを含めた4人のオーバーエイジを起用できる。鹿児島戦では35歳の元日本代表FW前田遼一ら4人が初めて名前を連ねた。 前田と2トップを組んだ久保の年齢差は20歳。練習も一緒にしたことがなかったが、それでも前田の巧みなポストプレーに上手く反応して、前を向いてボールをもち出すシーンが数多く作られた。31歳のボランチ梶山陽平も後方からサポートしてくれた。だからこそ、ゴールがほしかった。 飛び級で招集されたU‐20日本代表のドイツ遠征で不在だった前節を除き、3試合で先発フル出場。ゴールを決めた時点で、久保本人は「意識していない」というJリーグ最年少得点記録が生まれる状況が続く。 もっとも、JFLからJ3へ昇格した今シーズンから鹿児島の指揮を執る、FWカズ(三浦知良=横浜FC)の実兄・三浦泰年監督は、「得点だけじゃない」とベンチで久保の非凡さを感じていた。 「皆さんは得点だけを望むようなところが多いけど、ゲームを作るところや個の力でウチの選手をはがすところなど、非常に面白い選手だと思いました」