敵将・三浦ヤスが過保護育成に反対。「久保健英よ、騒がれて強くなれ!」
本来の所属はFC東京U‐18で、この春から高校生になる久保に対する取材は、バルセロナの下部組織からFC東京U‐15むさしに移籍した2015年春以降、原則として規制されてきた。 記憶に新しいところでは、2月のフジゼロックス・スーパーカップの前座として開催されたネクストジェネレーションズマッチ。U‐18 Jリーグ選抜に招集された久保は、試合前の練習段階からただ一人、取材非対応となった。 FC東京の要望を受けてJリーグ側が協議し、決められた措置だったが、これを一部メディアが「過保護ではないか」と報道。ファンやサポーターによる、「いまは騒がずにそっとしておいて」「過度のプレッシャーは才能を潰しかねない」といった反論がネット上をにぎわせた。 実際、久保をめぐる報道に対しては慎重論を求める声が圧倒的に多い。それでも三浦監督は、「そういうプレッシャーをはね返してほしい」と持論を唱える。 「注目されすぎることに対してネガティブなことを言う人もいると思うけど、注目されるなかで久保君が結果を残していくことが、すごく大事なんじゃないかと思う。あまり騒がないほうがいい、という考え方ではなくて、それ(騒がれること)をはね返していくだけの力をつけてほしいなと。 そっとしておけという意見も、一流のプロになるには注目されすぎることを克服していくことも必要だという意見も、もちろん両方とも正しいと思う。それらを含めたすべてがプロフットボール文化だ、ということをみんながもっと知るべきだし、そういうなかで久保君を支えてあげていってほしい」 FC東京側としても、件のネクストジェネレーションマッチを含めて、育成組織の一員として活動する間は取材を規制。一方で立石敬之GMは、U‐18所属のままトップチームの試合に出場できる2種登録選手となり、Jリーグの公式戦に出場した場合は対応させる方針をかねてから示していた。 そして、実際にメディアの質疑に応じている久保は背筋をピンと伸ばしながら、しっかりと自分の言葉を紡ぎ、思いの丈をファンやサポーターへ伝えている。鹿児島戦後には、プロの舞台で戦っている自覚を込めてこう語ってもいる。 「もう何試合もやらせてもらっているので、そろそろ周りにすがっているだけではダメだと自分でも思っていて。ただ、球際でも逃げないようにしているので、成長しているんじゃないかなと」 今後も軸足はFC東京U‐23に置き、J3で結果を残しながらYBCルヴァンカップ、そしてJ1でプレーするチャンスをうかがう。5月20日には、勝ち進めば大会期間中に16歳になるU‐20W杯が韓国で開幕する。ますます注目度とプレッシャーが増すなかで、久保は体、技、そして心を成長させていく。 (文責・藤江直人/スポーツライター)