五輪控えるパリの「不都合な真実」。でこぼこの石畳、階段しかない地下鉄…花の都は「バリアー」だらけ
それを聞いて疑問が浮かんだ。インフラのバリアフリーは日本の方が充実しているようだが、心のバリアフリーはどうなのだろう。話題は、車いすでの映画館利用を巡る「炎上事件」に及んだ。車いすインフルエンサーとして活動する女性が、映画館で車いすを持ち上げてもらい席に着いたところ、次は別の劇場で鑑賞するよう促され、「行き場のない怒り」などとSNSに投稿、批判が相次いだという一件だ。投稿が逆に障害者バッシングにつながるのではと不安を抱いた当事者もいたようだが、市田さんはどう受け止めたのか。 「投稿の内容や報道から知った範囲で感じたことですが」とした上で「過剰なクレームとも受け取られかねず、正直共感はできませんでした」。いったんはこう話してくれた。 「でも…」と悩んだ末に口にしたのは、アメリカのドキュメンタリー映画「ハンディキャップ・キャンプ 障がい者運動の夜明け」。障害者差別撤廃をうたう法律の制定を巡り、座り込みや道路封鎖、ハンガーストライキに参加する当事者が登場する。「障害者が時に過激な手段も使って問題提起することでバリアフリーが実現されてきた歴史があって、僕もその恩恵は受けているんです」と明かす。
さらに自らの経験に照らして答えてくれた。「ライブハウスの人はリスクを顧みず僕を車いすごと持ち上げてくれた。でもバリアフリーが徹底していればそんなリスクを負わずに済んだはず」 持ち上げてもらった市田さん自身も恐怖心があったと明かす。「それに車いすに乗っているとどうしても人の手を煩わせ『すみません』と思ってしまう機会が多い。誰かの手を借りずにどこにでも行ければやっぱりそれが一番理想的ですよね」