五輪控えるパリの「不都合な真実」。でこぼこの石畳、階段しかない地下鉄…花の都は「バリアー」だらけ
夏に五輪・パラリンピックが開かれる「花の都パリ」は、障害者に優しくない街なのかも―。記者が実際に車いすユーザーとパリの街を歩いてみた感想だ。大きくうねった石畳は、記者がスーツケースを転がして歩くだけでも一苦労。同行者の乗った車いすはひっくり返りそうになった。 【写真】万博はもう中止できないのか?「オリンピックと同じ末路に」警鐘 でも政府は「能登」を横目に…
地下鉄は網の目のように張り巡らされているが、車いすで乗れるのは1路線だけ。主要駅では人波をやりすごし、スリにも注意を払う必要がある。迂回に迂回を重ね、移動には通常の3倍の時間を要した。 東京やロンドンは五輪・パラリンピック開催を機にバリアフリーが進んだとされる。「パリは大丈夫?」。記者が当事者と街を歩き、思いを聞いた。(共同通信=村越茜) ▽車いすパラリンピアンの実感は 4月下旬、パリ近郊ナンテールの鉄道駅で、フランク・マイユさん(53)と待ち合わせた。車いすで暮らす元パラ競泳選手。1988年のソウル大会の銅メダリストだ。長年、フランスの障害者団体「APFフランスハンディキャップ」のメンバーとして、交通機関などのバリアフリー化を求め闘ってきた。 まずは競技やセレモニーの会場となる中心部のコンコルド広場へ向かうことにした。車いすでなければ約20分だが、マイユさんは苦笑い。「そう簡単じゃない」。コンコルド広場の最寄り駅に止まる地下鉄3路線は、どれも車いすでは利用ができないからだ。
パリの地下鉄は1900年に開通。名所が集まる中心部を走り、パリジャンや観光客の主要な移動手段だ。しかし、1~14号線のうち、車いすで乗れるのは「14号線」だけ。ほかの路線は駅にエレベーターがなかったり、車両とホームの段差があったりして利用できない。 ▽乗り換え、迂回、スリにも緊張 コンコルド広場までどうやってたどり着けば良いのか。マイユさんとバリアフリー対応のルートを相談する。車いすで乗れる14号線の駅のうち、コンコルド広場に最も近い「マドレーヌ駅」に向かい、そこから移動することに決めた。 まずは、鉄道で「シャトレ・レアール駅」へ行き、14号線に乗り換える必要がある。鉄道に乗ろうと駅の案内所に行って声をかけると、駅員が車両に乗り込むためのスロープをすぐに用意してくれた。「ここは顔見知りだからね。ほかの駅では存在をアピールしないと、長く待たされることもあるよ」 「シャトレ・レアール駅」に到着。多くの鉄道や地下鉄が交差するマンモス駅だ。人波をやり過ごしつつ、乱立する案内表示を解読する。スリも多いと聞くので緊張感がある。乗り換えルートを見つけ出し、14号線に乗車。「マドレーヌ駅」で降りると、付き添いに手を引かれ構内を歩く白杖の女性を見かけた。床に点字ブロックはないようだ。 ▽うねる道路、かかった時間は3倍