家買えず結婚できない人が増加 中国の局地的不動産バブルの黒幕は誰?
80年代の日本のバブルとどう違うのか?
日本でも80年代にバブルが発生したが、日本の場合は株式相場と地価が一緒に上昇した。地価の上昇によって企業の保有資産の価値が高まって担保価値が増し、企業は借入金を拡大して積極的に事業を広げた。中国では株式相場と不動産価格の連動性はない。株式相場は15年夏にかけて急騰した後に急落したが、不動産価格の動きは無関係だった。中国では土地は国有で使用権だけが売買される。不動産価格の上昇によって企業の担保価値が増して借入金を増やすことができる、ということもない。中国のバブルは日本とは違う。 中国の不動産バブルで深刻なのは、投機資金による価格上昇で、本当に住宅を必要とする人たちにとって手が届かなくなることである。中国では若者が結婚する際、新郎が住居を購入することが前提になっている。一人っ子政策が続いた中国では、たった一人の子のために親が資金援助するが、それでも住宅が買えないために結婚できないという事態が起きている。こうした状況を放置すれば国民の不満が高まる恐れもある。 一方、中国では不動産の好況時に建築した物件が在庫として積み上がり、16年末の不動産在庫面積は6億9539万平方メートルと、年間販売面積の4割強に達している。習近平総書記・李克強首相の指導部は構造改革を目指す中で、鉄鋼などの過剰生産能力の削減とともに不動産在庫の削減も重点に置いている。しかし、投機資金によって不動産価格が高くなりすぎれば、住宅を購入しようとする人にとって手が届かなくなり、売れ行きが鈍って在庫削減も進まなくなる可能性がある。また、価格抑制策によって不動産価格が下落に転じれば、先安感から買い控えられることにもなりかねず、不動産価格のコントロールは難しい課題である。不動産価格の下落が広がるようなことになれば、住宅ローンを貸している銀行の不良債権が拡大することにもつながる。局地的な不動産バブルは指導部にとって厄介な問題である。 【連載】中国経済の実態<リアル>(日本経済研究センター主任研究員 室井秀太郎)