家買えず結婚できない人が増加 中国の局地的不動産バブルの黒幕は誰?
中国の不動産バブル、黒幕は誰か?
ほかの都市の動きと乖離して急騰する一部都市の値動きは、不動産に対する投機が激しくなっていることを示している。16年12月に開いた中央経済工作会議では、不動産市場についての項目を立て、「不動産は住むためのものであって、投機するためのものではない」として、不動産バブルを抑制するとともに、不動産価格が大きく上昇したり下落することを防ぐ必要を強調した。 中国では、1980年代まで住宅は国有企業や事業体などの職場が保証するものであった。90年代から本格化した国有企業改革の中で、企業は住宅を従業員に保証することをやめ、住宅は個人が購入するものになった。 改革開放政策の進展とともに高度経済成長が続くと、民営企業を起こして発展させるなど、個人の才覚で財産を築く層が出現した。こうした富裕層が、資産をさらに増やす手段として、居住する目的以外に値上がりを見込んで2棟目以降の不動産を購入したり売却するようになった。金融商品の種類が豊富ではない中国では、富裕層の余裕資金などは株式市場か不動産市場に流入することが多い。 投機資金は個人だけでなく、集団で不動産価格を吊り上げようとする動きをすることがある。淅江省(せっこうしょう)の温州は民営経済が早くから発展したところである。この温州で蓄積された資金が、過去に上海などの不動産を買い占めて価格を上昇させたことがあった。温州の投資家たちは「温州購房団」または「温州炒房団」と呼ばれる。「房」は不動産を示す「房地産」のことで、「炒」は文字通り食材を炒めて調理するように、お金を投資して増やす行為を指す。
中国の規制をかいくぐり流入する、海外からの投機資金
中国で株式や不動産に流れ込む投機資金は「熱銭」と呼ばれる。「熱銭」は海外から流れ込む資金を指すことが多い。中国では資本移動は規制されているが、投機資金は規制をかいくぐって流入する。その方法には、中国からの輸出代金を水増しして海外から送金したり、合弁企業を設立した際の登記資金を使うなどが指摘されている。海外からの投機資金は、人民元の先高観が強く、中国国内の金利も比較的高くて、しかも不動産価格が上昇している時には流入しやすかった。ドルなどを人民元に換えて預金したり、不動産に投資すれば、金利収入や不動産の値上がりによる利益が見込め、さらに人民元の対ドル相場の上昇によって資産が増えるからである。しかし、中国の景気減速が長引く中で、人民銀行は利下げを繰り返し、人民元は先安観が強まっている。投機資金にとっての運用環境が悪化する中で、投機資金の流出が加速している。その結果、14年6月に4兆ドル目前まで膨らんだ外貨準備は、その後も貿易黒字と海外からの高水準の直接投資が続いているにもかかわらず減少が続き、17年1月には2兆9982億ドルと3兆ドルを割り、2年7カ月でほぼ1兆ドル減った。 海外からの投機資金が流出する中で、局地的な不動産価格の急騰が起きていることは、国内に蓄積された投機資金が大きいことを示している。値上がりしている地方が限られているために、人民銀行は一律な抑制策を採ることができず、不動産価格が急上昇している都市で住宅ローンの頭金比率の引き上げや、2棟目以降の購入制限を実施して対応している。 人民銀行は景気減速に対応して14年後半以降、貸出・預金の基準金利の引き下げと預金準備率の引き下げを相次いで実施した。金融緩和によって膨れ上がった流動性は不動産への投機に向かっているが、企業の設備投資には生かされない。企業の設備投資と公共投資を合わせた固定資産投資は、16年に8.1%増となり、伸び率は前年の10.0%から下がった。とりわけ国有企業を除いた民間の固定資産投資は16年に3.2%増と伸び率は前年の10.1%から大きく落ち込んだ。資金が実物経済への投資に向かわず投機に回る現象を、中国では最近、「脱実入虚」と呼んで問題視している。