家買えず結婚できない人が増加 中国の局地的不動産バブルの黒幕は誰?
改革開放政策の進展に伴い、高度経済成長が続いていた中国ですが、急速にそのメッキがはがれ始めています。とくにいま政府にとって厄介な問題となっているのは、ある特定地域の局所的不動産バブルです。投機によって住宅価格が高騰し、本当に住宅を必要としている人には行き渡らないという異常な事態が起こっているのです。 そもそもこの不動産バブルを招いたのは誰なのか? 中国の不動産市場の特異性と1980年代の日本のバブルとの違いなどについて、日本経済研究センター主任研究員の室井秀太郎さんが解説します。
特定都市の不動産価格が急騰
中国で局地的な不動産バブルが発生している。中国国家統計局は毎月、70大中都市の不動産価格指数を発表している。前年同月比の増減率を見ると、2015年初めごろまでは、おおむね各都市とも上昇するときはそろって上がり、下落するときもそろって下がるというように、緩やかな上下の動きを繰り返していた。これは、不動産価格が上昇すると、中央銀行である中国人民銀行が商業銀行に住宅ローンの頭金比率を引き上げるように指示し、さらに上昇が顕著な時には2棟目や3棟目の購入を制限するなどの措置を採り、不動産価格が下落した場合は逆に住宅ローンの頭金比率を下げたり、2棟目以降の購入制限を緩める措置を採って不動産価格の安定を目指してきた結果である。 ところが、15年半ば以降、特定の都市の不動産価格がほかの都市よりも目立って急騰する事態が起きている。深センの不動産価格指数は15年5月あたりから大きく上昇し始め、上昇率は月を追うごとに大きくなり、16年3月と4月には6割を超えた。
その後は上昇率が緩やかに縮小したが、この間の急騰は異常であった。深センほどではないが、上海、北京は15年後半から上昇率が大きくなり、上海の上昇率は16年8月から10月にかけて3割を超えた。16年12月の不動産価格指数を見ると、合肥(安徽省<あんきしょう>)と廈門(あもい)が4割を超し、南京で4割近くに達するなど地方都市での急騰が目立つ。