「終わりのないスキャンダル」を考え直すべき時…雰囲気で押し切って行為に及んだことのない男などいるのか
女性の認識と男性の認識
表に出ている合意条件のうち、対象を広く取った謝罪が行われたことは良かったと思っています。他人の内心など、最後は知りようがありません。松本さん自身がどう思っていても、飲み会に参加した女性の中にもしも不愉快な思いをした人が一人でもいるならば謝るのは当然のことだと思います。 また、大スターに寄せられる賛辞が、多くの場合は心からのものではなく、何らかの思惑に基づくお世辞であるというのも、意識すべき点です。社会の枢要な立場、あるいは店長とか単に上司とか、そのレベルであっても――に立つ男性は皆、これを心しておいた方がよいでしょう。好意と性的関心はまったくの別物だからです。 多くの男性は、自分は松本人志さんとは違う!と言いたがります。確かに、スイートルームを貸し切ったり、後輩芸人がいつも飲み会をセットしてくれたり、飲み会にこぞって女性が来てくれたりするような境遇は稀でしょう。乱倫な印象も、不道徳であるとして反感を買ったと思います。 しかし、本件で問われているのはその「王様」的側面だけではありません。世間の常識が置き換わる前の時代に、相手を断りにくくさせる、しつこい重ねての要求、明白な同意を得ずにその場の雰囲気で押し切って行為に及ぶなどの行動を一度もとったことのない男性というのは、果たしてどれだけいるのでしょうか。刑事上の罪が問われているのではない以上、松本さんの「疑惑」を論じるとき、上で挙げたような行為と同列のことがあったかなかったかについて「疑惑」として話しているのだという事実に、世間の男性はどれだけ自覚的なのでしょうか。 胸に手を当ててみれば、多かれ少なかれ、男性はその場の相手の気持ちを軽視したり、十分にケアしなかったりしたことがあるはずです。あるいは、性行為の内容自体も物を言います。安易な考えで適切な避妊を拒み、女性を妊娠中絶させたことはないのか。これも刑法上の罪ではありませんが、避妊を拒んだ結果としての中絶は女性の心身への加害要素が強く、現代ではそうした不誠実な過去が被害者によってセンセーショナルに告発され、連日話題となれば、マスコミを含めた企業幹部も芸能人も、その地位を失うことでしょう。 職場や大学サークルの先輩と飲み会で盛り上がり好意を覚えたが、いざ部屋で二人きりになったらまったく愛のない独りよがりの行為をされて、断り切れず不本意で傷ついて泣きながら帰ったというような思いをしたことのある女性は、世間にごまんといます。ほとんどの男性が、過去を振り返れば多かれ少なかれ同意の意味を誤解してきた以上、自分は違う、という認識は大いなる誤りであると認識した方がいいと思います。
三浦瑠麗