東京でも“内密出産”受け入れへ…母親の支援どう確保? 「ガイドラインで規定しきれないことは法律で解消を」
■預け入れる“母親”をどうサポート
森本氏が特に訴えるのが、子どもだけでなく母親へのサポートだ。 「私が取材した方は、『なかなか人に言えなかったけど、もっと早く相談すればよかった。相談していいんだということをみんなに言いたい』と言っていた。すべての医療機関に守秘義務があり、ちゃんと秘密は守ってくれるので、“安心して病院にかかっていい”と伝えていく必要がある。ひとつ忘れてはならないのは、男性側の責任。無責任な男性を助けることになってはいけない」 また、「出産時だけ医療が介入すればいいということではない」とも指摘する。 「妊娠した時から定期的に妊婦健診を受けていただく必要があるし、出産した後も産後うつの危険性はある。医療が関わってきちんとケアをしていく必要があると思う」 本番組(2022年2月14日放送)に出演した熊本県・慈恵病院理事長兼院長の蓮田健氏は、赤ちゃんポストや内密出産を利用する女性について、「8割から9割に、例えば発達障害、知的障害みたいな背景を持っていたり、被虐待歴、家族との関係、特にお母さんとの関係がうまくいっていない」と述べている。 森本氏は「妊娠の相談窓口は非常に増え、匿名でいいという行政もある」とした上で、「必要なのは、“この国は安心して子どもを産み育てられるんですよ”“育てられなかったら他の養親に託す方法もあるし、みんな妊娠したことを責めたりせずに祝福するんだよ”というメッセージを出していくことではないか」との見方を示した。
■「ガイドラインで規定しきれないことは法律で解消を」
伊藤氏は「(2022年に作られた)ガイドラインで規定しきれない部分は、法律を作らないと解消できない。安定的な運用や安心安全の担保を国がするべき」と、法整備の必要性を改めて指摘。具体的な問題には、出自を知る権利や、出産費用などがある。 「実は今作っている特定生殖補助医療の法律で、出自を知る権利を国が100年間担保する、というものをようやく生むことができそうだ。これは精子・卵子の話だけだが、内密出産や特別養子縁組まで広げられるので、なんとかやっていきたい。制度の安定的運用にはまだまだ課題がある。お金の話や妊婦健診を受けられずに産むことによる医療事故や訴訟、係争。それから実施機関の選定は、拠点を増やしていく上では絶対に決めないとダメ。そして、どこまで母親の権利・プライバシーを守るのか、子どもの権利として福祉の観点で情報を取ってくるのか。(母親のプライバシー権と子どもの知る権利は)相容れないが、結論を出すのは自治体ではなくて国だ。 母親が情報を知られたくないという点も、まさに今特定生殖補助医療法で詰めている。“あなたはこういう産まれ方をした”“あなたはこういうルーツだ”と知っていないと、自分の情報にアクセスできない。アクセスした時には、どこまで出すか、何歳で出すかを国が担保できているか。ただ、アイデンティティを保つために知りたい情報は子どもによって違うはずで、“全てを知ることが出自を知る権利だ”と決めつけるのは傲慢だと思う。なので、そこも含めて精緻に進めている」と説明した。(『ABEMA Prime』より)
ABEMA TIMES編集部