古代人が恐れた「長屋王」の「祟り」と「疫病」
自害に追い込んだ長屋王の「祟り」か、首謀者の藤原武智麻呂(写真・栄山寺蔵)は天然痘に苦しんで没した
風邪は万病の元とはよくいったもので、長い間人類は、風邪やインフルエンザに苦しめられてきた。 『三代実録』(平安時代の官撰史書)の貞観4年(862)条に、人びとが咳逆(しはぶき=咳の病。インフルエンザだろう)に冒され、大勢亡くなったとある。10年後にも、咳逆が流行し、死者が出ている。今も昔も、人間の命は、はかない。科学や医学が進歩し、人類が食物連鎖の頂点に君臨しても、結局、微小な生物には勝てないのだ。 ちなみに、この咳の病、渤海(ぼっかい=中国の東北地方を中心に朝鮮半島北部からロシア沿海州にかけて存在した国)の人びとがもちこんだと噂されていたという。新しい病が海の外からやってくることを、列島人は経験から知っていたのだろう。
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関裕二