なぜ32歳の高橋大輔は4年ぶりの現役復帰を決意したのか?その意義と人生観
当然、全日本では、羽生、宇野という2人のメダリストとの新旧対決の可能性も出てくる。 「金メダリスト(羽生)、銀メダリスト(宇野)に勝てるものなら勝ちたいが、正直、勝てる気は一切しない(笑)。練習している中で、自信がついてきたら思い切り食らいつきたい。不安が100パーセントだが、楽しみな感覚しかない。一チャレンジャー。なくすものは何もない。勝てなくて当たり前。勝てれば儲けもの。誰が見ても世界を引っ張っている2人だから別次元。一緒に戦える位置まで行けるかどうかわからないが、全日本の最終組に入って一緒に6分間練習をしたいと思っている」 高橋氏は、そう苦笑いを浮かべながら語った。あくまでも現時点では「1年限定」の考えで、来年以降、つまり4年後の北京五輪へという目標設定もしていない。 「北京までは考えていない。そのとき35歳。まあ、わかんないですけど…国際大会については頭の中にない。いまの時点では考えられない。ポイントの問題も出たりするでしょう。ただ、もしチャンスがあるなら、もしですよ。もしがあるなら、これから世界を目指す後輩の邪魔をすることになるのではないか、という思いもあり、色々と、考えながら先を決めていきたい。まずは世界よりも日本で自分がどこまで成長できるか、戻れるかという戦いになる」 年始から現役復帰に向けてのトレーニングをスタートさせた。 当初は、「世界で戦えるレベルまで戻すことは困難だと感じながら練習をスタートさせ、体が言うことを聞かず、やっていけるのか?」という不安に襲われたが、「体が仕上がってくると、もう少しこういうこともできるのでは?という気持ちに変わってきた」という。 フリーのプログラムが完成した4月からは、本格的な練習内容にステップアップ。フリーの振り付けは、ブノワ・リショーに依頼した。4回転の申し子、ネイサン・チェンや、平昌五輪に出場した坂本花織らを担当した気鋭のフランス人振り付け師で、まだ未完成のショートの方は、かつてタッグを組んだことのあるデイビッド・ウィルソンに依頼している。 現在は、関大、西宮のリンクを使い、週に5、6日、一回で2、3時間のトレーニングを積んでいる。4年のブランクの間、4回転時代が加速しているが、「4回転は2種類くらいは跳べるようにしておかないと戦えない。でも、ジャンプも現役の後半よりもいいんじゃないか、もしかしたら行けるかも、という可能性は少し見ている。いい感触はある」という。4回転の種類は明らかにはしなかったが、現役の最後にトゥループは成功させていた。4回転トゥループに、もう1種類の4回転だろう。練習は、ほとんど一人で行い、ジャンプのタイミングを調整しているが、新しい試みにもチャレンジしている。