「キャリア採用できない会社は行き詰まる」 新卒至上主義の大手企業が業績悪化の危機に
「キャリア採用は一朝一夕にはできません」
キャリア採用ができないことは、安定した採用者数を確保できないこと以外にも懸念点がある。それは、事業環境の変化に合わない、古びた事業構造の変革に必要な人材を迅速に確保できない問題を引き起こすのだ。既存社員のリスキリング(学び直し)も簡単ではない。 しかし、キャリア採用を進めるためには、採用ノウハウ以外にも、経営戦略を立て直したり人事制度を見直したり、働き方の柔軟性、福利厚生、ひいては職場の組織文化などを含め、さまざまな要素を変革しなければならない。 Aさんは「正直、ちょっと対応が難しそうな企業はありますね」と明かし、そのような企業はいずれ業績を悪化させるのでは、と懸念する。 「NECは一時は企業の存続が真剣に危ぶまれるような状況にありましたが、生き残りを賭けた経営戦略の立て直しを行い、実行に移すことで業績を改善させ株価も上昇しました。採用計画だけ変えても人は集まりません。事業戦略を変え、それにあわせて新卒一括採用、年功序列、終身雇用を前提としたさまざまな制度や文化を変えなければ、キャリア採用は一朝一夕にはできません」 特に大量採用で人員がダブついていた「バブル入社組」の最後の世代が、あと数年で60歳を迎える。定年退職の穴を新卒採用でそのまま埋める必要はないものの、退職スピードとのアンバランスで大手上場企業でも人手不足の危機に直面する会社は出てくるのではないか、とAさんは見ている。