メガサプライヤーの時代(下) 進む水平分業化 自動車開発は新しい時代に
新時代の自動車開発
サプライヤーに外注するにせよ、エンジニアリング会社に外注するにせよ、自動車メーカーはこれまでと違う動きが求められる。外注先の仕事を定義するのは「仕様書」だ。メーカーは当然その部品に何が求められるのかについて十分な知識がある。これまでのように内部で、あるいは長年の付き合いのある下請けメーカーと取引するならば、その仕様はあるていど阿吽の呼吸で何とかなる。いわゆる暗黙知というヤツだ。 しかし全く別の文化を持つ海外のメーカーにそんなことは求められない。同じ外注でもその仕様の書き方が違ってくる。「仕様書に書いてなくてもそのくらいは察して欲しい」と日本のメーカーが思う一方で「仕様書の通りに出来ているのに何か問題があるのか」という行き違いが起きるのだ。異文化を持つ企業に思った通りの部品を設計、開発、製作してもらうのは、これまでと違う基準を作らねばならない。 もう一つ、日本のサプライヤーの未来の話もしておきたい。デンソーはボッシュに次ぐ世界ナンバー2のサプライヤーだ。しかしその株式の24.73%はトヨタが保有している。さらに言えば8.70%は豊田自動織機の保有となっており、完全にトヨタグループの一員だ。ここにジレンマがある。 デンソーは当然ボッシュを抜きたい。世界一のサプライヤーを狙える地位にいるのだからそれは当然だろう。しかし、そのためには世界中の自動車メーカーと等距離の立場を取り、リソースをフルに使い切りたい。これがトヨタの思惑とぶつかる。トヨタにしてみれば、グループ内のデンソーに仕事を頼みたい時にリソースがいっぱいでは困る。「他社との取引をするなとは言わないが、ウチの話が聞けない状態になってもらっては困る」と考えているはずだ。 しかし、それではいつまで経ってもボッシュの背中を捉えることができない。一方のドイツ本国のボッシュは世界一のサプライヤーでありながら、株式非上場で完全に独立を保っている。特に研究開発が重要な業種にとって、長期展望を株主に邪魔されずに描ける意味は大きい。 日本の自動車産業がさらなる発展を遂げていくためには、水平分業の時代に、メーカー、サプライヤーがそれぞれの戦略を持ち、時代に即した新技術の開発を継続していかれるメソッドをどう構築するかにかかっているのだ。 (池田直渡・モータージャーナル)