一時、8月以来の「1ドル150円」台突入も…にわかに囁かれ始めた11月の米雇用統計「急悪化」予想がもたらす今後の展開【国際金融アナリストが考察】
今週の注目点…「NFP急悪化」予想が浮上
今週は、雇用統計やCPI(消費者物価指数)のような注目度の高い米経済指標発表予定はありません。一方で、最近の雇用関連指標へ過敏に反応する傾向からすると、少し気が早いものの、翌週11月1日発表予定の米雇用統計の話題が注目を集める可能性もあるのかもしれません。 というのは、10月雇用統計のなかでも、NFP(非農業部門雇用者数)は、前回の25万人増から13万人増といった具合にほとんど半減するとの予想が浮上しているからです。 9月FOMC(米連邦公開市場委員会)の0.5%といった大幅利下げを正当化したのは雇用の急悪化懸念の可能性があったことから、雇用関連指標への注目度はいつも以上に高まっているといえるでしょう。 そういったなかでは、NFPの急減予想がマーケットに注目される可能性があるかもしれません。 一方で、私個人は、同じ雇用統計のなかでも、金融政策への影響として「失業率」に注目しています。これは、米国の政策金利と失業率の修正値(失業率ー10年MA)の相関性が高いためです(図表5参照)。 この関係を参考にすると、11月1日発表予定の10月失業率が、前回から横這いの4.1%なら利下げ見送り、4.2%なら0.25%の追加利下げ、4.3%なら0.5%の大幅利下げが連続する可能性があるといった見通しになります。最近の雇用関連指標への過敏な反応を参考にすると、そういった雇用統計予想が相場の変動要因になる可能性もあるかもしれません。 上述の「NFP急悪化予想」が材料視された場合は、米金利低下を通じて日米金利差の「米ドル優位・円劣位」の縮小により、米ドル安・円高要因になる可能性が高いと言えます。 その場合は、9月の米ドル/円の高値、147.2円を割れるかが大きな分岐点になりそうです。一方、米ドル/円の上値の分岐点は、すでに述べたように120日MAの位置する151円台後半になると考えられます。 以上を踏まえると、米ドル/円の今週の予想レンジは、147~152円程度となります。ただ、冒頭に述べたように過去2週間、週間値幅が2円前後の小動きが続き、それは今週も続くことも考えられます。そのため、上下の重要分岐点に達しないまま、149~151円中心の小動きになる可能性もあります。 吉田 恒 マネックス証券 チーフ・FXコンサルタント兼マネックス・ユニバーシティFX学長 ※本連載に記載された情報に関しては万全を期していますが、内容を保証するものではありません。また、本連載の内容は筆者の個人的な見解を示したものであり、筆者が所属する機関、組織、グループ等の意見を反映したものではありません。本連載の情報を利用した結果による損害、損失についても、筆者ならびに本連載制作関係者は一切の責任を負いません。投資の判断はご自身の責任でお願いいたします。
吉田 恒
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