[特集/改革者クロップの軌跡 01]CL&プレミア制覇で一時代を築いた クロップとリヴァプール、蜜月の9年間
見どころ満載だった5年目 30年ぶりにプレミア制覇
クロップは自身が志向するゲーゲンプレスによる強度の高いスタイルをしばしば「ヘヴィ・メタル・フットボール」と表現したが、4年目に完成形となってCL制覇を達成。ほぼメンバーが変わらなかった5年目の19-20は攻守両面でさらに連携が磨かれ、各選手がよりオートマチックに素早く動けるようになり、開幕から白星を積み重ねた。 ノリッジに4-1で快勝すると、8連勝で序盤からガッチリと首位をキープ。12節マンC戦にもファビーニョのミドルで先制し、3-1で勝利してさらに勢いを増した。プレミアにリヴァプールの攻撃を防げるチームはなく、27節を終えてなんと26勝1分け。28節ワトフォードに0-3で敗れて一休みするまで一気に駆け抜けた。 冬の移籍期間にはサラー、マネ、フィルミーノの負担を軽減するべく南野拓実を獲得し、バックアップを充実させた。CLではラウンド16でアトレティコ・マドリードに敗れ、FA杯は5回戦、リーグ杯は準々決勝で敗退したが、プレミアでは首位の座を一度も明け渡さず。史上最速となる7節を残して優勝を決めてみせた。 大勢が決した終盤戦に黒星があり、最終的な成績は32勝3分3敗で勝点99。歴代2位となる勝点、歴代最多タイとなる勝数という記録的な数字を残し、実に30年ぶりの戴冠となった。クロップ体制になって4年目、5年目のリヴァプールは、各選手が迷いなく動き、連携も取れていて簡単にゴールを奪う記憶にも強く残るチームだった。 得点王こそ逃したが、サラーはチーム最多の19得点に加えて10アシスト。マネが18得点7アシスト、フィルミーノも9得点8アシストとフロントスリーの得点力は相変わらず。特筆すべきは両サイドバックのアシスト数で、ロバートソンが12、アレクサンダー・アーノルドが13を記録した。 中盤では加入2年目のファビーニョが初年度よりもチームに馴染み、存在感を発揮。素早いトランジション、正解なパスワークでヘヴィ・メタル・フットボールを支え、チームを高みへと押し上げた。個性的な選手たちをまとめた主将のヘンダーソンのリーダーシップ、最終ラインに君臨したファン・ダイクの抜群の安定感……。クロップが作り上げた19-20のリヴァプールは、随所に見どころがあった。