[特集/改革者クロップの軌跡 01]CL&プレミア制覇で一時代を築いた クロップとリヴァプール、蜜月の9年間
継続した強化&的確な補強で4年目に欧州制覇を達成
クロップがリヴァプールに来て3年目の17-18は、ブレない基礎の上にいよいよ良質な資材で建造をはじめた1年となった。フィルジル・ファン・ダイク、モハメド・サラー、アンドリュー・ロバートソン、アレックス・オックスレイド・チェンバレン。いずれもこのシーズンに加わった選手たちで、こうした即戦力の補強によってゲーゲンプレスはいよいよ精度を増していった。 とくに大きかったのは冬の移籍期間に獲得したファン・ダイクで、加入するとすぐにフィットし、後方からチームを支える存在となった。最終ラインは右からアレクサンダー・アーノルド、マティプ、ファン・ダイク、ロバートソン。攻撃力を兼ね備えた4名が揃ったのは、このシーズンからだった。 さらには、前線である。フィルミーノを頂点に、右にサラー、左にマネ。爆発的な得点力を持つ“フロントスリー”が揃ったのもこのシーズンで、クロップ率いるリヴァプールはプレミアだけではなく、CLでも相手を圧倒する戦いを見せるようになっていった。 フィルミーノ、サラー、マネは意思の疎通が取れていて、フィルミーノが左右に流れたり中盤まで下がったりしたときはそのスペースにサラーやマネが走り込み、スペースを効果的に使う。ここにアレクサンダー・アーノルドやロバートソンがサイドバックの概念を一新する動きでからむことで、次から次に選手が押し寄せ、二次攻撃、三次攻撃を仕掛けるサッカーをピッチで体現していた。 17-18のリヴァプールはサラーが32ゴールで得点王になり、フィルミーノ(15得点)、マネ(10得点)も二桁得点を達成。プレミアで2年連続4位となり、CLでも決勝に進出した。レアル・マドリードに敗れて戴冠はならなかったが、すでにクロップの思い描くチームになっており、優勝まであと一歩のところまできていた。 18-19はマンCと激しい優勝争いを演じた。シーズンを通じて、プレミアで敗れたのはそのマンCに1-2で競り負けた1敗のみ。30勝7分1敗で勝点97というハイスコアを記録した。他のシーズンであれば優勝に匹敵する数字だったが、優勝したマンCにわずか1ポイント及ばず2位となった。 選手の顔ぶれは前年と大きく変わらず、とくに最終ラインの4人とフロントスリーはほぼ固定してシーズンを戦い抜いた。サラー、マネは仲良く22ゴールで並び、得点王を分け合った。フィルミーノは12ゴールで4年連続二桁得点を達成している。 変化があったのはまずGKで、足元の技術力が高いアリソン・ベッカーが加わった。鋭い反応でリーグトップのシュートセーブ率を記録しただけでなく、攻撃にも良い効果をもたらした。アリソンはプレイエリアが広く、足元の技術力も高い。正確なフィードでチャンスを生み出すことができるため、アリソンがボールを持った瞬間にフロントスリーが前方に走り、そこにピタッとロングボールが入るシーンも見られるようになった。 中盤にはファビーニョ、ナビ・ケイタ、ジェルダン・シャキリが補強され、ターンオーバーすることが可能に。それまではジョーダン・ヘンダーソン、ワイナルドゥム、ミルナーというセットが多かったところに、この3名が入ったことで強度を落とすことなくシーズンを戦い抜けるようになったのである。 システムにも変化が見られ、[4-3-3]だけではなく[4-2-3-1]を選択する試合もあった。サラーの1トップ、2列目にシャキリ、フィルミーノ、マネを並べる布陣である。自陣に守備ブロックを作る相手に対して、より厚みのある攻撃を仕掛けるためのオプションだった。 クロップが監督になってから4年が経ち、すでに機は熟していた。プレミア制覇こそならなかったが、CLでは2年連続決勝に進出し、トッテナムを2-0で下して優勝を飾った。継続した強化、的確な補強のすえに掴み取った14年ぶりの欧州制覇だった。