打撃投手の目線で感じた「育成のカープ」。他球団を経験して久本祐一が改めて抱いた思い
カープ球団を支える人たちにスポットライトを当て、裏側の仕事について探る本連載。今回は、現役時代に中日、広島の2球団で活躍した久本祐一さんが登場。現役引退後は打撃投手としてチームを支えている久本さんに「打撃投手のやりがい」や、「現役時代との違い」について聞いた。(全3回/3回目) 【写真】カープで打撃投手を務める久本祐一氏 打撃投手というのは一見誰にでもできそうな仕事に見えるかもしれませんが、実は、そうではないと思っています。僕自身は、打撃投手という仕事は『遊び』がなければできないのではないかと思っています。僕が感じている『遊び』という感覚は、仕事に対しての力の入れ具合というか、『余白のようなもの』というイメージです。 遊びがあるほど、周り全体を見る余裕ができます。例えば、10のうちの7を投げることに力を注ぐとすれば、残りの3で、ベンチの動きや試合の流れ、選手の様子を観察する。そうすれば、野球そのものをすごく面白く感じることができるのではないかと思っています。これは野球だけでなく、そのほかのスポーツにも通じることなのではないかとも思いますね。 僕が他球団を経験した上で、いま改めて感じていることは、カープはやはり『育てるのが上手い』チームだということです。そんなチームを支えていくために、僕も打撃投手として、打者の要望に100%応えることができるような存在になりたいと思っています。大袈裟かもしれませんが、もし打者に「右で投げてほしい」と言われれば、右で投げる練習もするでしょう。これは僕の性格的に、「できません」というのが嫌だというのもありますが(笑)。 打撃投手として感じるプレッシャーはもちろんありますが、現役時代とはまったく異なる種類のプレッシャーだと思っています。その分、余っている力を自分の役割に注ぎ込んでいきたいですし、これからも打者のため、カープの勝利のためになるような仕事をしていきたいと思っています。 ■久本祐一(ひさもと・ゆういち) 1979年3月14日生、大阪府出身。 柏原高ー亜細亜大ー河合楽器ー中日(2002~2012)ーカープ(2013~2016年引退)。2001年ドラフト4巡目で中日に入団。左の中継ぎとして活躍し、中日が日本一に輝いた2007年には、日本シリーズにも登板した。2013年にカープに移籍し、先発・中継ぎとして活躍。2016年限りで現役を引退すると、中日の打撃投手に転身した。2021年からカープに復帰し、打撃投手を務めている。
広島アスリートマガジン編集部