「目の前の幸せも、一歩踏み出さないと手に入らない」…童話『青い鳥』から読み解く「真の起業道」とは
近年注目が集まっているアントレプレナーシップ。「起業家精神」と訳され、高い創造意欲とリスクを恐れぬ姿勢を特徴とするこの考え方は、起業を志す人々のみならず、刻一刻と変化する現代社会を生きるすべてのビジネスパーソンにとって有益な道標である。 【漫画】頑張っても結果が出ない…「仕事のできない残念な人」が陥るNG習慣 本連載では、米国の起業家教育ナンバーワン大学で現在も教鞭をとる著者が思考と経験を綴った『バブソン大学で教えている世界一のアントレプレナーシップ』(山川恭弘著)より抜粋して、ビジネスパーソンに”必携”の思考法をお届けする。 『バブソン大学で教えている世界一のアントレプレナーシップ』連載第77回 『自分の「夢の目的」はなんだろう?…“サイゼリヤ”と“政治家”の寓話が語る、夢をかなえる起業家の「思考回路」』より続く
童話『青い鳥』
メーテルリンクの『青い鳥』は多くの人が知っている物語でしょう。 貧しい木こりの家の子供、チルチル、ミチルの兄妹は慎ましく暮らしていましたが、近所の金持ちの家庭を羨むようになっていました。そんなある日、魔法使い(原文のフランス語ではla Fée〔妖精〕)から「自分の子供の病気を治すために、幸せの青い鳥を捕まえてきてほしい」と頼まれます。 チルチルとミチルは、青い鳥を探す旅に出ます。「思い出の国」「夜の御殿」「森」「墓地」「幸福の花園と幸福の御殿」「未来の国」を巡ります。幾度か青い鳥を見つけ、時には捕まえるのですが、すぐにその鳥は死んでしまったり、青い鳥ではなくなってしまったりします。 最後に家に帰った二人は「青い鳥なんていなかったんだ」と落胆し、床につきます。しかし、目が覚めると隣の部屋の鳥かごに青い鳥がいるのです。二人は幸せの青い鳥はすぐそばにいたことに気がつきます。すると、不満ばかりだった暮らしの中に、幸せがあふれていることにも気がついたのです。
起業家が『青い鳥』から学ぶべき3つのこと
一般的には「幸せとはすぐ近くにある」「心の持ちようだ」というような解釈をされることが多い話です。しかし、起業家的には、興味深い点が3つあります。 まず1つ目は、「魔法使い/妖精の幸せのために、青い鳥を探す」という点です。 貧しい自分たち、近所の金持ちが羨ましい自分たちの幸せのためではなく、他者のために幸せを探しに行くのです。 たいていの童話や昔話では「自分のためだけに行動する人」は不幸になります。これは道徳的な意味合いですが、「青い鳥」は利他的な行動の意味を説いているように思えるのです。いわゆる「情けは人のためならず」、人にかけた情けは、巡り巡って自分に返ってくる、そういう意味に感じられます。 2つ目は、いくつもの場所を巡る旅です。 「青い鳥を探してくれ」と頼まれ、旅に出ること。これは「一歩踏み出した」と言えるのではないでしょうか。そして、青い鳥の手がかりを探して、さまざまな場所を訪れます。的はずれな場所もあれば、期待できる場所もあります。一歩、踏み外したような場所も訪れます。一歩はみ出したような、失敗もします。しかし、二人は諦めることなく「青い鳥」を探し続けます。 結局、二人は疲れ果てて家に帰るのですが、旅のあいだ二人を導いてきた光の精はこう言います。 「一生懸命探したのです。いつかきっと見つかりますから、元気をだしてください」 この光の精はこう付け足したかったのではないでしょうか。 「あなたがたが探し続けるならば」