小5がノートに手書きでプログラミング、35年後にAIで動かしたら パソコン購入反対されても叶えた夢
プログラムはあるのに…
それでも、諦めなかった阪さん。「やっぱりゲームを作りたい」 本屋で情報を探していると、あるパソコン雑誌を見つけました。そこには読者が投稿したゲームのプログラムが文字で掲載されるページがあり、そのプログラムさえ打ち込めば、自分のコンピューターでそのゲームができる、というものでした。 「このコードが分かれば、ゲームが作れるんだ!」 阪さんは母に頼み、父に内緒でプログラミング言語「BASIC」の入門書を買ってもらいました。その日から、学校から帰ると、家でプログラミングのルールや仕組みを覚え、ノートにコードを書き込みました。 当時を振り返ると「それしかしてなかった」というぐらい、「プログラミング」に夢中になった阪さん。一方で、どこか寂しい気持ちもありました。 プログラムはあるのに、実際に動かすことができない…。 「コンピューターもないのに、ノートでこんなことやってるの、僕だけだろうな」 あの頃は恥ずかしくて、友達にも、誰にも言えませんでした。
「これって永久保存版じゃない?」
それから35年経って、「奇跡的」に見つかった、あの手書きのコード。 「これって、永久保存版じゃない?」。慌てて紙切れを写真に撮り、実物も「これは残しておいて」と母に託しました。 そのコードを見ただけで、あの頃のように、どんな動きをするのか「脳内再生」できました。しかし、現代ではそのプログラムを実行する環境を整えるのが難しく、そのときはそれだけで終わってしまいました。 時が経ち、今月、阪さんが仕事でAnthropic社の生成AIモデル「Claude3」の性能評価をしていた時、ふと、あのとき撮った手書きコードを思い出しました。 「今ならワンチャン、動かせるかも」
例えるなら「イチゴの香り」
手書きコードの写真をClaude3に読み込ませ、ブラウザでも動かせるようにプログラミング言語「JavaScript」のコードに生成してもらい、実行してみました。 沈黙の漆黒の画面、「スタートボタン」を押します。 1回目は、あっという間に終わってしまいました。「現代のパソコンの速度だと早過ぎる、当時のパソコンはもっと遅かった」。阪さんはAIに「もう少し遅く」と修正を依頼しました。 そして2回目。 ピッと音が鳴り、画面上に鮮やかな「水色」の「四角」が現れました。 手書きのコードに書かれた、当時ではおなじみの「ビープ音」を出す命令。「ちゃんとAIが再現してくれたんだ」と驚きました。 四角は、ピッピッという音に合わせて「赤」「青」「赤」「青」と色を変えながら、右に移動していきます。 色の変化は、小5の時に仕込んだランダムに色を変える命令。サイコロを振るように、不規則に色が変わっていきます。 次は「黄色」。そして「青」。 「灰色」「灰色」「深緑」「青」「青」 「黄色」「ピンク」「黄色」 「白」「黄色」「ピンク」「灰色」 最後に鮮やかな「水色」。 20秒ほどで終わりました。 「当時のコンピューターってこんなだったよな」。懐かしさがこみ上げました。 コンピューターを持っていなかったあの頃、動かしたくてしかたなかったプログラムが、いま、音を鳴らして動いている。 ずっと「脳内再生」してきたけれど、実際に音が鳴って動いているものを見るのは「まったく別の体験」だったそうです。 「例えるなら、想像してきた『イチゴ』の実物を見たら、香りがした、そういう感じです」