ぶっちゃけ、定年前の「年収1000万円」は「もらい過ぎ」だった…63歳現役大企業社員がそれでも「下の世代」に言いたいこと
世代間の「壁」が生まれる理由
ーー終身雇用と年功序列の難しさを感じますね。 これは私個人の意見ですが、年功序列は年齢ではなく、努力の積み重ねを評価するシステムなのだと思います。組織のトップに30~40代の人が立つのは、やっぱり何かが違う気がする。日本の会社の悪いところかもしれないけれど、ここはサラリーマンをやる以上は割り切るしかない。 ーー下の世代は割り切れないかなと。どんなに頑張っても会社に搾取されてしまう。日本経済の先行きも怪しい。自分の将来がどうなるのか、多くの若者は不安と絶望を抱えています。世代間の溝や壁が、日に日に高くなっている印象が僕にはあります。ここ最近は若者の間で「老害」って言葉も流行ってるみたいです。 そういった世代間の壁を壊すための一つの手段として、飲みニケーションは有効だと思うのですが、コロナ以降はガラリと文化が変わってしまった。ここは勿体ないし、正直ちょっと寂しい。少し前の時代までは、気楽に飲みに行ける空気感がありました。私はお酒を飲みながら、たぶん1000回以上、上司や会社の悪口を言ったと思います。そんな時に隣で肩を叩きながら「一緒に頑張ろうぜ」と言ってくれる会社の仲間たちがいた。 最近だと「退職代行サービス」とかも流行ってるじゃないですか。上司はともかく、先輩や同期など相談できる相手が一人でもいれば、たぶん退職代行を使うことにはならないと思うんです。会社を辞めることが悪いとはまったく思いませんが、職場の人間関係のあり方について、上の世代も下の世代も、立ち止まって考える時期が来ているかなって。 ーーなるほど。 今は時代の変化が激しいこともあり。これまでの自分たちのやり方が通用しなくなりつつあることを、昭和の企業戦士は感じています。だから私たちはZ世代に対して何も言わないし、伝えない。パワハラとかアルハラとか、警戒している部分もあるけど、どうせ何を言っても響かないだろうと諦めたり、臆病になってる部分がある。だけど頭の悪い管理職は、ああだこうだ口うるさく、さも自分たちが絶対的正義かのように説教する。柔軟性のないアドバイスを聞かされ、若い子たちはますます聞く耳持たなくなる……。 全部が悪循環ですが、昭和の企業戦士のやり方は、令和の時代でも通用する部分がたくさん残っているはずです。通用する部分に関しては、私を含めた上の世代は自信を持って伝えるべきだし、下の世代はもう少し謙虚に学ぶ姿勢があってもいいのかなって。 * * * 定年前の年収はもらい過ぎであり、けれど通算だと割に合っていない……。「逃げ切った世代」の本音は、我ら「逃げ切れない世代」からすると新鮮で、示唆深い内容だった。 後編記事〈年収1000万でも「牛丼大盛」はムリ、再雇用後の楽しみは「イオンの発泡酒」…63歳現役大企業社員が「本当に使えるお金」〉では、酒井さんの「リアルな生活水準」について話を聞いていく。彼が「本当に使えるお金」ははたしていくらくらいなのか……?
佐藤 大輝(ライター)