「日本のデモクラシーはフェイクだ」KADOKAWA前会長が告白…「中世」と呼ばれる「日本の人質司法」の闇
「出版人としての責任感」が原動力に
――80歳を超えて、なおそうした困難に立ち向かう胆力のようなものはどこからわき起こってくるのでしょうか。 今回意識しているのは、自分が言論人であるということと、出版人であるということです。それが私のよりどころなのです。 たとえば2002年、個人情報保護法案に対して、治安維持法が悪用された歴史的経緯を踏まえ、日本雑誌協会をはじめ私たちは個人情報保護法の成立に反対する活動を行いました。作家の城山三郎先生らとともに記者会見も開き、結果として同法案は廃案になりました。 国家権力というものは表現の自由、出版にこれからも制約をかけるような法律をつくることは十分にあり得ると思っています。そういう危機意識があり、それが私の胆力の根底にあるのかもしれません。 刑事事件の被告人が歴史的に大きな役割を担うことがこれまでもありました。「袴田事件」でいまなお苦難を背負われている袴田巌さんは、再審の法制度を変えるという役割を担っています。 「ロス疑惑事件」で無罪を勝ち取った三浦和義さんは、最高裁における名誉棄損の新しい判例を数多くつくりました。「郵政不正事件」の村木厚子さんは取り調べ時に録音・録画する新しい司法システムの導入を促しました。 私は保釈後、自分が生きて拘置所を出ることができた意味を考え続けました。国際社会から「中世のなごり」と批判される日本の司法制度を改革し、人質司法によって自分と同じ犠牲者を生まないように死力を尽くすこと。日本が真の民主主義国家となるために、私の残された人生を捧げる覚悟です。それは出版人としてメディアに生きた者の責務でもあると考えています。
角川 歴彦、田之上 真