「日本のデモクラシーはフェイクだ」KADOKAWA前会長が告白…「中世」と呼ばれる「日本の人質司法」の闇
国を相手に「人質司法違憲訴訟」を提起
――今回、「人質司法」をなくすために国を相手に訴訟を起こされました。 「人質司法」は日本国憲法と国際人権法に違反するとして、国を相手に「人質司法違憲訴訟」を起こしました。これは「公共訴訟」と呼ばれるもので、私個人の被害を救済するためではなく、人質司法という人権侵害制度を広く世に問うための訴訟です。 人質司法違憲訴訟は、私が無罪獲得を目指す刑事裁判とはまったく別の裁判です。原告は人質司法の被害者である私で、被告は国です。 人質司法違憲訴訟は前例がなく、勝てないという意見が圧倒的です。確かに孤独でハードルの高い戦いになると思います。ただ、私を心配してくれて、支援の手を差し伸べてくれる人も大勢います。なんとしてでもその壁を打ち破ってみたいと思っています。 その点で、私の支えになっているのが、憲法違反の3大事件です。一つは、「らい予防法違憲国家賠償請求訴訟」です。ハンセン病患者の強制隔離を定めたらい予防法は憲法違反だとして元患者らが起こした公共訴訟です。 2001年、熊本地裁は原告の訴えを認める画期的な判決を下しました。国は異例にも控訴を断念し、当時の小泉純一郎首相が患者・元患者に謝罪する談話を発表しました。 もう一つは、「表現の自由」を巡る裁判です。独立系の映画製作会社「スターサンズ」が製作した映画『宮本から君へ』(2019年公開)は、文化庁所管の独立行政法人「日本芸術文化振興会」から助成金の交付内定を受けていたのですが、出演俳優による薬物使用事件の有罪確定を理由に取り消されたのです。 スターサンズは助成金交付を求めて訴訟を起こし、一審は勝訴したものの、控訴審で逆転敗訴を経て、2023年に最高裁で逆転勝訴が確定しました。最高裁の裁判官4人全員一致で「公益を理由とする不交付が広がれば表現行為が委縮する可能性があり、表現の自由の趣旨に照らしても看過しがたい」との判断を示しました。 直近では今年7月、旧優生保護法のもとで障害などを理由に不妊手術を強制された人たちが国を訴えた裁判の判決で、最高裁判所大法廷は、旧優生保護法は憲法違反だとする初めての判断を示しました。 そのうえで「国は長期間にわたり障害がある人などを差別し、重大な犠牲を求める施策を実施してきた。責任は極めて重大だ」と指摘し、国に賠償を命じる判決が確定しました。 この3つの例を見て、裁判官の中にも人権に対する意識を変える人が少しずつ増えているのではないかと期待しています。