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例えば緑野菜は発色を良くするため茹でているが、パプリカは香ばしさをつけて味を濃縮させるためにローストしている。シイタケは炭火焼き。ナスは皮をむいてから灰汁を取り、オリーブオイルと塩とレモンタイムで味付けし、真空袋に入れてスチームコンベクションで蒸すという徹底ぶりだ。それぞれの野菜の食感や味わいが引き出されており、食べるたびにさまざまな野菜のハーモニーが広がる。添えてあるソースは、本来なら廃棄されてしまうセロリの葉を利活用したもの。セロリの葉、ヘーゼルナッツ、オリーブオイルを使いジェノベーゼのようなイメージで仕上げたというが、ジェノベーゼよりも爽やかで後味が軽やかな印象だ。
瀬戸内レモンを使ったリゾット、食後感も軽やかな和牛の炭火焼き
広島出身で「Ryokan尾道西山」で総料理長を務めた加茂シェフの料理には、瀬戸内の優れた食材がふんだんに用いられている。「瀬戸内塩レモンのリゾット」は、その代表的な料理だ。
リゾットに使用する瀬戸内産のレモンは、火入れをしても香りが飛ばないように八角やブラックペッパー、シナモンスティック、クローブ、ローリエなどのスパイスやハーブと一緒に3カ月以上発酵させている。
お米は広島県と島根県で栽培されているという「越宝玉」という品種を使用。和菓子に使われることが多いお米で、一般的な日本米より少し大きく、モチモチした食感で、リゾットに仕上げたときにも味わいが豊かだという。
中国地方の塩レモンとお米を合わせ、パルミジャーノレッジャーノで乳化させ、カンボジア産の無農薬栽培の「クラタペッパー」とパルミジャーノレッジャーノを削りかけ、アマランサスをトッピングしたらリゾットの完成だ。 口に含むと、レモンの味と香りがほとばしる。塩レモンは酸味の角が取れて、まろやかな味わいで、パルミジャーノレッジャーノがレモンの味にコクを添えている。爽やかな柑橘系のニュアンスを感じる「クラタペッパー」も良いアクセントだ。
「岡山県岩本牛の炭火焼き」も加茂シェフが「Ryokan尾道西山」時代に出合った牛肉を使った一品だ。ホルモン剤を使用せず、独自の餌で飼育している岩本牛は、赤身の味がしっかりと濃く、胃がもたれないという。牛肉にそこまで関心がなかった加茂シェフがその味に惚れ込み、少ない生産量の中、仕入れを許された貴重な銘柄牛だ。