日本企業を硬直させる恐ろしい「事例病」...米国名門バブソン大学で教えられる「失敗」へのマインドセット
近年注目が集まっているアントレプレナーシップ。「起業家精神」と訳され、高い創造意欲とリスクを恐れぬ姿勢を特徴とするこの考え方は、起業を志す人々のみならず、刻一刻と変化する現代社会を生きるすべてのビジネスパーソンにとって有益な道標である。 【漫画】頑張っても結果が出ない…「仕事のできない残念な人」が陥るNG習慣 本連載では、米国の起業家教育ナンバーワン大学で現在も教鞭をとる著者が思考と経験を綴った『バブソン大学で教えている世界一のアントレプレナーシップ』(山川恭弘著)より抜粋して、ビジネスパーソンに”必携”の思考法をお届けする。 『バブソン大学で教えている世界一のアントレプレナーシップ』連載第27回 『Dropbox創業者がMITで演説した「最も幸せで成功している人」になるためのヒント…「テニスボールを追いかける犬」になれ』より続く
「事例」にこだわる凡人が求めている「もの」
知人のエピソードを紹介します。プロマーケターとして数百社のビジネスについて調査してきた里田実彦氏です。彼は「事例にこだわる会社は、結局何もしない」と言います。 そうした会社では、社内に新しいシステムを導入する、新しいビジネスを始めるというときに、「これ事例あるの?」「他社ではどうやってるの?」という声が必ず出てくるそうです。そこで、担当者が似た事例を見つけ出して提示すると、「ここがうちの会社と違う」「企業規模も違うし、商材もこれが違う」と突き返されると言います。 「結局、彼らは“絶対にうまくいく保証”を求めている。そんなものはないという事実には目もくれない」 この「事例病(と彼は言っていました)」は根が深く、この病気にかかった人が意思決定者の中に一人でもいると、その会社は何もできなくなります。すべては、成功した他社の後追いになるのです。「PDCAを回せ」「トライ&エラーだ」「失敗を恐れるな、チャレンジ精神だ」という口で、「事例は?」と聞いてくるからたちが悪い、とも言っていました。
失敗は「するもの」
失敗は恐れるものではありません。むしろ、みなさんには積極的に失敗してほしいと思っています。わざと失敗する人なんていません。成功すると思って全力でぶつかっても、失敗するときはします。というか、圧倒的に失敗します。 ---------- “Anticipate, tolerate, and embrace Failure.” (失敗を予測し、許容し、受け入れる) ---------- 失敗することは当たり前だと予期し、失敗したならばそれを許容し、真摯に受け入れて、むしろ失敗を奨励する。私は、起業家に限らず、あらゆるビジネスパーソンはこうあるべきだと思っています。 「失敗しちゃだめだ」 この思考が、すべてを停滞させます。社内起業で失敗したら出世の道が絶たれる。新規事業に失敗したら投資家から出資してもらったお金が返せない。もう、次に出資してくれる人がいなくなる。 そんなことはない、と断言します。それくらいで出世の道が絶たれる会社なら転職すればいい。あるいは独立して起業すればいい。一度や二度の失敗で出資しなくなるなら、別の投資家を探せばいい。借金? 返せます。
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