【ダイエットの落とし穴】走っても脂肪は燃えない?「運動すれば帳消し」の危険な誤解
会食や忘年会、クリスマスや年越し、正月の集まりなど、食事の管理が難しい年末年始。食べ過ぎ、体重増加が気になる人にぜひ読んでほしい1冊が『英国の専門医が教える 減量の方程式』だ。 著者はオックスフォード大学医学部を首席卒業後、食欲や体重管理の研究でイギリスを代表する減量専門医のサイラ・ハミード氏。イギリスで深刻化する肥満人口増加を食い止めるべく、「フル・ダイエット」と呼ばれる減量プログラムを考案。参加者たちは平均16キロ減量、糖尿病の改善、血圧低下など、科学的にめざましい効果が実証された。 ついに刊行される日本語版の本書から、一部を抜粋して特別にお届けする。 ● なぜ「運動でカロリーを消費させる」 ではうまくいかないのか? まず知っておくべき重要なことがあります。それは、「運動でカロリーを消費させる」という考えから抜け出すことです。 これは「カロリー・イン/カロリー・アウト」という考え方の一部で、「後でジムに行くから」と言ってビスケットに手を出すなど、我慢できずに甘い物を食べることの言い訳によく使われます。 しかし、「運動すれば、甘い物を食べて増えたカロリーを帳消しにできる」というこの考えは正しくはありません。 このケースの場合なら、ビスケットは体重の増加以上に身体に悪影響を与えます。まず超加工食品は、腸内細菌にとって有害で、身体の他の部位にもダメージを生じさせます。ビスケットに含まれる砂糖も害をもたらします。 糖の大部分は3つの燃料タンク(肝臓、筋肉、体脂肪)に振り分けられますが、一部は心臓や腎臓、脳など、身体の他の部分に沈着します。 やがて、これらのデリケートな身体の部位は「糖でコーティング」されるようになります(このプロセスは「糖化」として知られています)。糖化は心疾患や腎機能低下などの問題を引き起こします。また現在では、脳への過剰な糖化と認知症との関連性が研究によって示唆されています。 このことからも、「甘い物を食べてもジムに行けば帳消しにできる」という考えが正しくないことがわかります。 こうした食べ物(糖)が与える身体へのダメージは、運動では元に戻せないのです。悪い食事がもたらす影響からは、逃れられません。 ● 「体脂肪消費」までの遠い道のり また、「摂取した余分なカロリーは、運動すれば解消できる」という考えは、「ビスケットを食べて増えた分のエネルギーは、ジムに行けばすぐ使い切れる」といった思い込みを前提にしています。 けれども実際には、3つの燃料タンクは順番に使われていきます。まず筋肉に蓄えられている燃料(300キロカロリー分)が、次に肝臓の燃料(1000キロカロリー分)が使われます。 この2つの燃料を使い果たしたら、ようやく第3の燃料タンクである体脂肪(ビスケットを食べたことで得た余分な糖の大部分が蓄えられている場所)が使われ始めます。 しかし、筋肉と肝臓に蓄えられた合計1300キロカロリーを消費するには、何時間も運動をしなければなりません。これは、ほとんどの人にとって現実的ではありません。 つまり、40分間のガーデニングや30分間の水泳など、私たちが忙しい日常生活の中で行っている運動のほとんどは、体脂肪ではなく、筋肉と肝臓に蓄えられた燃料のみを使っているだけなのです。 これを知れば、運動によって脂肪を燃やせるという考えが正確ではないことがわかるはずです。 (本稿は、『英国の専門医が教える 減量の方程式』を一部抜粋・編集したものです)
サイラ・ハミード/児島 修