「よかれと思った指導がパワハラに」…弁護士に聞く「パワハラ」と「指導」の境界線とその見極め方
2_「愛の鞭」は通用しないと心得よう 手取り足取り教えるよりも「自分で考えろ」と突き放したほうが成長する、なんていうのは過去の話。会社は修行の場ではありません。トレーニングをするうえで必要な情報を伝えるのは業務上必要な行為。それをあえて伝えないというのは、業務上必要ではない行為と評価されやすいと思います。 3_馴れ合いの関係に甘えるな 人間はいつまでも同じ方向を向いているとは限りません。そのときは「いいよ」と言っても、ある日「やっぱりおかしくない?」と思われて不当な扱いを受けていたと主張されたら、その時点でアウトです。 また、「言わなくてもわかるだろう?」と思ってはいけません。相手と自分が同じことを考えていると勝手に決めつけないことが大切です。そして、苦手な相手に対して腫れ物扱いをすることも、問題解決にならないのでNGだと思います。 4_恐れずにコミュニケーションをとろう 同僚だろうが部下だろうが、相手に何か不満そうな感じとか、不安そうな様子が見られたら、「どうしたんだい。何が気に食わないんだい?」と、ここは怖がらずに聞いてみるのも大切です。被害者側も、相手の行為や言動に悪意があると決めつけたり、思い込んだりすることなく、理不尽だと思うのであればそう思う理由を具体的に説明したうえで、相手がどう考えているかを確認してみるべきです。 職場内外を問わず、他人の心の中なんて絶対にわからないものですから、職場の内外を問わず、わからないことや疑問に思うことは、的確に相手に伝えてコミュニケーションをとるのが大切。それは双方に言えることです。 5_もっとドライに考えよう 毎日何かしらの話題を振ったり、1日の出来事で話を考えてみたりと、上司の中には頑張っていらっしゃる方もいますが、それが客観的に必要なことなのかどうかは慎重に検討してもよいかもしれません。行きたくない人を、無理に食事に誘わなくてもいいんです。職場は人間関係を構築する場所ではないと割り切り、仕事を進めるためのコミュニケーションは十分にとるけれど、職場外ではドライな対応をすることも「あり」と考えてよいかと思います。 6_なるべく圧をかけないように心がけよう 挨拶をしない、挨拶を返さない、話すスピードが速すぎる、相手の反応を見ずに話し続ける、話を遮る、相手の話に無反応、会話の最初からネガティブ発言が入る、相手に自分の価値観や思想を押し付ける……。 このようなことが繰り返されると、相手との信頼関係が徐々に失われていき、パワハラの問題に発展する土壌が醸成されるような気もします。気をつけましょう。 梅澤康二(うめざわ・こうじ) 弁護士法人プラム綜合法律事務所代表、弁護士(第二東京弁護士会 会員)。2006年、東京大学法学部在学中に司法試験(旧試験)合格。2008年最高裁判所司法研修所修了。2014年、プラム綜合法律事務所設立。主な業務分野は労務全般の対応、紛争等の対応、その他企業法務全般の相談など。著書に『ハラスメントの正しい知識と対応』(ビジネス教育出版社)がある。 取材・文:井出千昌
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