「意思決定がブラックボックス化」の指摘も 2年目を迎えた小池都政
「都顧問」の活用範囲は今後も拡大か
これまでの小池都政で目についたのが、「都顧問」の重用だ。都顧問とは、都政運営について助言・進言を行う「非常勤」特別職の位置付けで、知事が選任する。都政改革本部の特別顧問には上山信一慶應義塾大教授が、市場問題プロジェクトチームの座長は同じく都顧問の小島敏郎・元青山学院大教授が就任した。 佐々木氏は「特定の顧問2、3人と密着して都政の重要判断をするなど、意思決定の過程がブラックボックス化した」と問題点を指摘。これに対し、北川氏は「(顧問を重用する)体制を作らないと都庁は動かず、都政はオープンにならなかった」と理解を示す。 8月2日付の朝日新聞朝刊記事で、小池知事は「(都職員に)相談すると議会に全部伝わるので、あえて重要な相談こそしなかったところは正直あります」と答えている。北川氏は「事実か否かはともかく、そう言われていること自体、都職員は反省すべきだ」と述べた上で、「小池知事は今後、約17万人の都職員と総額約13兆円の予算を最大限に活用して、都職員が一体となって、東京大改革を実現するべきだ」と述べ、2年目は組織の統括者として都職員の力をさらに活用するよう小池知事に注文した。 都顧問の活用範囲は、今後も拡大すると佐々木氏は予想する。「石原都政以降、政策を立案できる力量を持った職員を排除し続けた結果、今の都庁は政策立案能力が弱くなり、“事業官庁”になっている。ここ20年、そうした人材の育成を行わなかったツケはそう簡単に回復しない。小池知事は、外部の知識を入れないと都政が良くならないと思っているのではないか」と述べた。
「与党がブラックボックス化する可能性も」
都議会では、昨年8月の段階で小池知事を支援する議員は3人だったが、7月の都議選の結果、小池知事が代表として率いた都民ファーストの会が55人の議員を要する第1党になった(選挙後、特別顧問に退く)。北川氏は「知事が自ら与党をつくるのも政治家の個性」と認めつつも、「都政を監視しする議会の第1党が、執行する権限を持つ知事の与党となれば、与党がブラックボックス化する可能性もある。この恐ろしさを感じなければならない」と述べ、自分なら絶対に知事与党は作らないとした。 佐々木氏も「小池知事は、二元代表制を自ら崩す党首政党制へ踏み切った。何でもイエスしか言えない都民ファーストの会が、決定者・監視者・提案者・集約者という議会の4つの役割を果たすために都議会全体をリードできるかどうか。一元代表制、1輪車都政(知事独裁)に陥ると、再選に赤信号が灯る日は遠くない」と懸念を示した。 これまで、自民党都連や都議会を「ブラックボックス」、都議会自民党の内田茂前都議を「都議会のドン」と呼ぶなど、仮想敵を設定する手法を採用してきた小池知事。佐々木氏は「彼らを守旧派、抵抗勢力、悪玉に仕立て、自分(小池知事)は改革派、善玉、正義の味方、都民ファーストだと主張する政治マーケティング手法で都議選を勝利したが、この先『敵」はいない」として、今後は仮想敵の設定が困難で、小池知事の勢いが鈍化する可能性もあり得るとした。 (取材・文:具志堅浩二)