「私だけ、なにも知らなかった…」夫を亡くした女性、長年暮らした自宅の「登記簿」を見て衝撃…記載されていた〈想定外の事実〉とは
「遺贈」で生じる不都合とは?
筆者は、山田さんのほか提携先の司法書士を交えて話し合い、そこで、義両親に遺言書を作成してもらい、それぞれから山田さんに遺贈してもらうという案が浮上しました。 「義父も義母も、あの家に名義はありますが〈二男に買った〉という認識だと思います。ですから、私に遺贈する内容で遺言書を書くことも、抵抗はないと思います…」 しかし、夫の両親はお元気とはいえ80代です。いつ相続発生となるかわかりません。もし準備が整わないまま相続が発生すれば、夫のきょうだいにも相続権が発生することになり、困った事態となってしまいます。 それに、相続が発生するまで資産を動かせないことにも不安があります。
妻名義への変更を急ぐなら、売買も選択肢に
やはり、山田さん名義にすることを急がねばなりません。 義両親はすでにあげたものと考えているため「贈与」が第一選択肢ですが、それでは贈与税がかかってしまいます。贈与の場合の価格は路線価が基準になりますが、それよりも少し低い程度の固定資産税評価額でも税務署から否認されることはないだろう、というのは提携先の税理士の判断です。 それでも、土地、建物の10/15は600万円程度となり、贈与税の基礎控除110万円を超え、贈与税を計算をするとおよそ75万円ほど。さらに登記費用、不動産取得税もかかるため、100万円以上の費用が必要です。 これらの負担をなるべく減らすとなると「売買」が選択肢になります。土地・建物10/15を山田さんが義両親から固定資産税評価額で買い取るようにしますが、今回のケースでは、義両親は購入金額よりも安く売却することになるので、譲渡税がかからず、申告の必要もありません。 売買代金は支払うことになりますが、6年に分けて非課税枠の現金を贈与してもらうとして、売買代金と相殺することで現金の移動はなしとします。
義両親の名義があるばかりに、余計な出費がかさむなんて
義両親は他県に暮らしているため、契約書などの取り交わしは司法書士が間に入り、郵送や電話でやり取りをして行いました。 そして、司法書士と筆者の事務所で諸々の必要な手続きを行い、無事に売買の手続きが完了しました。 これらの手続きを経て、ようやく長年暮らした家が山田さん名義になったのですが、そもそも夫名義、あるいは夫と山田さんの共有名義であれば、余計な手間も、余計な名義替えの費用や不動産取得税がかかることもなかったのです。 親が子どもの住宅取得のため、金銭の援助をすることはよくありますが、名義を入れるのではなく、住宅取得資金贈与を活用して贈与するか、金銭消費貸借で貸付金にしておくべきことでした。 住宅購入時に仲介した不動産会社も、将来の相続を想定してアドバイスしないと、このように手間や税金が、あとからのしかかってくるのです。
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