「なぜ今、それを言った?」ユニクロ柳井会長、「ウイグル綿花使ってない」発言の深刻度…中国での不買運動は、日本でSNS炎上が起こるのとは影響度が違う
中国においては、政府が消費者をコントロールしているという側面があるからだ。 H&Mの不買運動においても、国営メディアが企業に対して批判的な報道をしたり、中国共産党の青年組織である中国共産主義青年団がSNS上で批判を扇動したりしている。さらに、ECサイトから商品が削除されたり、商品検索ができなくなったりといったことも起こった。 逆に、不買運動や排外意識が過熱しすぎると、中国政府は抑制策を行うことがある。
実際、2012年の反日デモの際に、筆者の知り合いの日本企業の社員が北京に駐在していたが、デモが過熱化した際に、過激なワードが検索できなくなったり、SNSの投稿が削除されたりといったことも起きていたという。 日本においては、あまり行われないが、自国の政治に対する不満をそらすために、政府が排外意識をあおることは、中国に限らず、多くの国で行われている。 強制労働が疑われる新疆ウイグル自治区の綿を使用しない――というのは、グローバル規模で社会的責任が問われる現代においては正しい判断だと思う。
しかし、いたずらに中国政府や、中国の消費者を刺激することは、逆に政治に利用されてしまうことにもなりかねないため、慎重になる必要があるだろう。 過去の柳井氏は、ウイグル問題について明言を避けてきたが、新疆綿を使い続けたかったからというよりは、上記のような負の連鎖が起きてしまうことを懸念してのことではないかと思う。 今回についても、「気を付けて発言していたが、つい話してしまい、それが報道されてしまった」といったところで、中国でバッシングが起きることは本意ではなかったに違いない。
■海外メディアとの付き合い方は要注意 海外メディアで報道されることによって、日本企業の問題が顕在化した例は今回の件だけではない。 故ジャニー喜多川氏の性加害問題は、BBCで報道されることによって、日本国内でも問題が顕在化した。 もちろん、明るみになったこと自体はいいのだが、一部分のみが過剰に切り取られる事態も起きている。 たとえば、SMILE-UP.(旧ジャニーズ事務所)の東山紀之社長が、BBCの単独インタビューを受けたが、放送された番組においてインタビューが発言の趣旨とは異なって使われたとして、2024年4月、BBCに抗議し、訂正と謝罪を求める文書を送付している。