「なぜ今、それを言った?」ユニクロ柳井会長、「ウイグル綿花使ってない」発言の深刻度…中国での不買運動は、日本でSNS炎上が起こるのとは影響度が違う
新疆綿の問題は、少なくとも日本国内においては問題になる機会は減っていき、徐々に忘れ去られていっていた。なぜ、今頃になってこの問題が蒸し返されたのだろう? これまで、柳井氏は政治的な発言を行うことは避けていたが、BBCのインタビューを見ても同様で、新疆綿の使用について聞かれた際に、「それは使っていません」と答えつつ、「まあこれ以上言うと政治的になるんでやめましょう」と続け、この話題を早々に打ち切っている。
状況を見るに、(本来は言いたくはなかったが)聞かれて思わず言ってしまい、それが報道されて中国で炎上してしまった――というのが実態のようだ。 ■中国での炎上、不買運動は深刻 世界の綿花の生産量は、アメリカ農務省(USDA)の発表によると、中国が世界一で全生産量の22.7%を占めている。さらに、中国の綿花生産量の8割超がウイグル産といわれている。 一方で、ユニクロ事業の2024年8月期決算によると、グレーターチャイナ(中国大陸、香港、台湾)の売り上げ収益は6770億円となっており、日本(9322億円)に次ぐ市場規模である。
つまり、ユニクロ事業において、中国は生産拠点、消費の拠点のいずれにおいても重要な存在なのだ。 ファストファッションのH&Mは、2021年に新疆綿をめぐって不買運動が起こり、2021年度第2四半期の売り上げは、中国市場の売上高は28%も減少している(同社は同年、新疆綿の綿花を使用しないと発表)。 資生堂は2023年12月の業績の下方修正を発表したが、こちらも中国市場の低迷によるものだ。中国の景気悪化に加えて、福島第一原子力発電所のALPS処理水が海洋放出されたことで、中国で日本の化粧品ブランドの不買運動が行われたことで、中国市場での業績が悪化したのだ。
日本国内の場合、SNSで不買運動が起きたとしても、実際に企業業績に深刻な打撃を与えるほどの影響を持つことはほとんどない。SNSで叩く人の多くは、実際の商品の購買者ではないし、実際に商品を買い控える行動にまで出る人はほとんどいないのだ。 ■中国消費者自身の自発的な不買運動ではない? 海外における不買運動は、一般に日本よりも影響が出るのだが、中国においては、特に注意しなければならない特殊事情がある。