観光客より京都市民が安いのはアリか 市外の観光客の反発招く恐れも、京都市の取り組みは広がるか
外国人観光客の急増によるオーバーツーリズム(観光過剰)が一部地域で課題となる京都市で、市民限定で商品・サービスの値引きや特典付与などの優遇策を行う観光事業者を市と市観光協会が募り始めた。市民の反感や負担を和らげ、観光産業と暮らしの共存につなげたい狙い。ただ、居住地で待遇を分ければ市外の客の反発を招く恐れもある。抵抗感を抱く事業者もあると考えられ、取り組みが広がるかは不透明だ。 【写真】観光客が押し寄せる京都の観光地 新型コロナウイルス禍を経て観光客が急回復した市内の観光地周辺では、バスの混雑やごみ問題といった影響が再び顕在化しつつある。観光客と住民の摩擦緩和に向け、市は価格の割引など「市民優遇」の取り組みを広げることで、観光客増加に伴う利益還元を市民が直接感じられる環境づくりを狙った。 市は雇用や税収を支える観光産業の重要性を伝えるウェブサイトを年内に開設する計画。サイトには市民優遇に取り組む事業者情報も掲載する予定だ。 想定する優遇策は、ホテル・旅館の平日割引や飲食店の限定メニュー提供、行列に並ばずに入店できる「ファストパス」など。すでに実施する事業者も含めてサイトに無料で掲載する方針だが、補助金などの財政支援はない。市観光協会は市民優遇の導入によって「新たな顧客の獲得や需要の平準化などの効果も考えられる」と期待する。 だが、在住地の確認など労力や経費の負担が必要となる事業者に広がるかは見通せない。土産物店などでつくる京都物産出品協会の津田佐兵衞会長は「市民への優遇という趣旨は理解できる」とした上で、「市民かどうかで待遇を変えれば反発を生む恐れもある」とし、慎重な姿勢を示した。