能登半島地震の甚大な津波被害が明らかに 特徴的な海底地形など影響、東北大災害研が解析
元日に発生した能登半島地震では、震源に近い沿岸部を中心に北海道から九州にかけ、広範囲で大小の津波が観測された。地震発生後しばらく分からなかった甚大な津波被害の実態も研究者の現地調査や解析などで明らかになってきた。
日本海側では過去にも津波被害が発生している。沿岸部に到達するまでの時間が短いのが特徴で、今回も石川県珠洲市には遡上高(陸地をはい上がった高さ)が3メートル以上の津波が推定約1分で到達したことが東北大学災害科学国際研究所(災害研)の解析で判明した。特徴的な海底地形などが津波の複雑な伝わり方に影響したという。研究者は短時間で襲う津波避難の難しさと避難方法の再検討を訴えている。
半島の「海脚」を回り込んで襲来
気象庁は1日午後4時10分ごろの地震発生後間もなく、東日本大震災以来初めての大津波警報を能登地方に、山形県、兵庫県などに津波警報を、北海道、佐賀県などに津波注意報を発表した。現行の特別警報の区分制度ができてから初めての大津波警報だった。
林芳正官房長官は15日午後の記者会見で石川県の珠洲市、能登町、志賀町の浸水面積は約190ヘクタールに上ると述べた。例えば野球場のグラウンドは1ヘクタール前後とされ、今回広い範囲が津波被害を受けたことが明らかになった。
各地で大小津波を観測し、石川県輪島市の輪島港では午後4時21分に1.2メートルを観測したが、その後はデータが入らなくなった。珠洲市の観測地点では地震直後からデータが得られていない。同市の地盤の隆起が関係して観測不能になったとみられている。
海に面した珠洲市の鵜飼地区には漁港がある。現地からの報道によると、鵜飼川の河口付近では津波が低い堤防を越えて浸水し、川沿いの道路に漁船なども乗り上げた。東日本大震災の後にも沿岸部各地で見られた被害の大きさを示す光景だ。
東北大学災害研の越村俊一教授は、同研究所のほか、金沢大学、北陸先端科学技術大学院大学、金沢工業大学の研究者と「現地調査先遣隊」を結成し、4日に珠洲市に入った。そして同市の津波遡上高は3メートルを超え、沿岸部の建物は2.5メートル以上浸水していたことを確認した。