「ここ30年で働き方を取り巻く環境は大きく変わりました」変遷期を乗り越えてきた各分野の女性リーダー4名がダイバーシティ、エクイティ&インクルージョン(DEI)について語り合う
男性社会に飛び込みキャリアを重ねるうちに自分の考え方にも変化が
――当時はまだまだ男性が主体の社会ですよね。そういった状況の中で社会人になられたみなさんの、入社当時のキャリアプランや現在のお考えなどをお聞かせください。 南里さん 先ほどもお話ししましたが、私が入社した時の同期女性は私を含め8名。管理職の女性にいたってはゼロでした。内定式で男性の同期が「最低でも支店長をめざしたい!」と意気揚々と語っていて、「これは大変なところに来てしまったぞ」と思ったことを覚えています。 私自身は、最初から管理職や役員をめざそう、という明確な意志はなく、「まずは3年頑張ってみよう」という感じでした。自分が選んだ会社なのだから、とりあえず3年間は責任を果たそうと。そうしているうちに3年が経ち、次は5年をめざそう、次は10年と少しずつ目標を先に伸ばしていって現在に至ります。ちょうど10年勤めた頃から、悩みは尽きませんでしたが、いつまで勤務しようという考えはなくなってきたように思います。 廣松さん 弊社は、元々女性の社員が多く、私が入社した時代は女性社員の平均年齢は今よりもだいぶ若かったです。南里さんと同じく、私が入社した時は本社に管理職の女性はおらず、お店のマネージャーとして数名の女性がいる程度でした。 私自身は、入社する際「10年続ける」を目標にしました。その理由は、就職活動の際に大学のゼミの教授から言われた「どんな会社でも10年はいないとわからない。まずは10年頑張れ」という言葉が心に残っていたからです。 ただ10年と目標を定めていたものの、長く勤めてキャリアを積みたい、と考えていたわけではなかったんです。単純に「自分の食い扶持は自分で確保しよう」という考えから。だって、一生一人で生きていくかもしれないじゃないですか(笑)。 仮に結婚したとしても、パートナーが何らかの事情で仕事ができなくなることも考えられます。パートナーを一人養えるくらいの収入はめざしたいな、と思っていましたね。 なので、数年勤めて管理職の一歩手前くらいまできたときに、「自分のキャリアはもうこれで十分、ここに留まりたい」と思ったんです。でも、そんな甘い考えを会社は許してくれませんでしたが(笑) 上司からは「ここから上に行きたくない、というのは会社においてはありえない。現状維持は後退。そんな人間には評価はあげられない」と怒られ、そこからは考えを改めました。 田中さん 私も、初めから管理職や役員をめざして入社したわけではありませんでした。就職活動はバブル期で、比較的志望が通る状況でした。当時はシステムエンジニアという職業が脚光を浴びていましたが、自分には向いていないと思い一般企業に入ることにしました。 入社当時、総合職の同期の女性は7人しかいなくて、どこにいっても「女性なのに総合職なんだ」って言われるくらい珍しがられました。 そんな環境の中でも、良かったことは、システム部門で一緒に働く協力会社には女性がたくさんいらしたこと。女性の部長もいました。 協力会社の方々と一緒に、ひとつずつ目の前のプロジェクトをこなしていくうちに今のポジションになっていた、という感じですね。 栢原さん 私もみなさんと同じで、入社当初は「とりあえず3年」と思っていましたが、実は最初の1か月で早々に挫折しかけているんです(笑)。配属初日に熱を出してしまい、まだ有給もない中で欠勤。翌日出勤した際に上司から「根性なしでがっかりした」と言われました。それがショックで母親に「私ダメかもしれない」と相談したことを覚えています。 それでもなんとか3年続けたころに、やっと仕事のおもしろさがわかってきた。私が仕事を続けられたのは、お得意先の方に恵まれたこと。営業先を回っていく中で、お得意先の方々に励ましてもらったり、目標の数字が達成できたり、たくさんの貴重な経験をさせていただきました。