「マンション価格」高騰で「賃貸物件」はどうなる? 専門家が明かす“特に賃料の値上がり幅が大きい”タイプの部屋とは
物件価格と比べ、賃料には“遅行性”がある
もちろん、同じ区内でも駅距離や築年数など、賃料はその物件が持つ特性に大きく左右される。その上で、あえて貸主、借主それぞれの狙い目のエリアを聞いてみると――。 「例えば、板橋区の三田線沿線や大田区の賃貸物件は、分譲マンションの売買価格の値上がりと比較して賃料の値上がり幅の遅行が大きいので、割安と言えるでしょう。大手町エリアへのアクセスが良く、比較的まだ賃料が安いエリアは存在します」(渕ノ上氏) それでは、不動産投資を考えているオーナーさんにおすすめなのは――? 「大規模な再開発を控える、港区の品川駅エリアは賃料の増加が見込まれています。物件価格も高いですが…。全般的に言えるのは、オーナーチェンジ物件は割安なケースが多いということ。住居者が退去するタイミングで賃料を上げることができるケースも多いため、利回りの改善を見込めます」(渕ノ上氏) ただ、賃貸のメインとなる単身者向けのワンルームマンションや、30平米前後のコンパクトな物件は、数も多くの物件ごとの条件がより細分化するため、エリアの相場観を掴みにくい。「買って住む」という“実需”とはまた違ったロジックも働くため、借りる人にとっても、貸す人にとってもより難易度が高いと言えそうだ。 「私たちが開発した“INVASE Pro”というアプリは、そのエリアの賃料相場や利回りの目安を物件ごとに可視化しています。メインは不動産投資をするオーナーさん向けの機能なのですが、そのエリアの相場観を知る上では借主の方にも参考になるはず。よければ使ってみてください」(渕ノ上氏)
ファミリータイプの賃料は値上がりが続く
最後に、今後の賃貸相場の行く末について聞いた。 「ワンルームタイプ、コンパクトタイプ、どちらも賃料は伸びていますが、特に値上がり幅が大きいのは60平米以上のファミリータイプですね。特に物件価格の上昇が大きいのがファミリータイプなので、オーナーさんも賃貸で利回りを維持するためには家賃を上げるか、物件自体を売って“利確”するしかない。もし、その物件を新たに買った人が賃貸で運用するとしても、購入金額に見合った賃料を設定する必要がある。需要が大きく供給量の少ないファミリータイプの賃料は、“買ったほうが得か、借りたほうが得か”という比較の中で、賃料と物件価格の双方が高め合う関係にもあります。人気エリアでは今後も底堅く、さらに値上がりが続く場所もあると予想されます」(渕ノ上氏) 一方で、エリアごとの賃料の値上がり幅はさらに二極化が進むという。 「日本はこれからどんどん人口が減っていきます。そうすると、人々はより資産確保の観点から安全安心、かつ便利な場所に住もうという志向が強くなります。結果的に都心や駅前の物件の需要は上がり、地方や郊外の駅から遠い物件などは、需給バランスの悪化が予想されます」(渕ノ上氏) 賃料の値上がりは借主にとって耳の痛い話だが、渕ノ上氏はそれも日本経済の成長には欠かせないことだと話す。 「経済合理性を考えれば、インフレに合わせて賃料も上がっていって然るべきです。賃上げによって消費が喚起されるというロジックと同じように、不動産投資のオーナーさんが収益を上げることで、日本全体の不動産の価値の向上にもつながると考えています。そのため、賃借人が変わるタイミングでは、なるべくオーナーさんには賃料の値上げを検討するよう勧めています。バブル経済では物件価格だけが上がり、賃料がほとんど上がらない時期が続き、最後は破綻へと繋がりました。物件価格が上昇し、一時的に賃貸の需要が伸び、今度は賃料が上がって物件購入の需要が伸びる。こうした健全なサイクルが続く限り、不動産の市況は上昇が続くでしょう」(渕ノ上氏) *** ここまではマンション価格の高騰が続く都心における、今後の賃料の見通しについて解説してきた。後編では“マンション人気爆発”の象徴とも言える「晴海フラッグ」の賃貸事情について、引き続き不動産ナビゲーターの渕ノ上弘和氏に聞く。
デイリー新潮編集部
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