子供の5人に1人がネット依存…自らスマホを手放す2泊3日「オフラインキャンプ」の効果
奈良県吉野町の野外活動拠点施設「吉野宮滝野外学校」。10月中旬にインターネットを遮断した「オフラインキャンプ」(同町など主催)が行われ、小学生から高校生まで大勢の子供たちが参加した。豊かな自然の中でハイキングやバーベキューを楽しむ一方で、スマートフォンを触る時間は制限され、オンラインゲームもほとんどできない。「スマホを無理やり取り上げるのではなく、自ら手放しメリハリある生活習慣を身につけてほしい」。主催者らはそう願う。 【写真】1日1時間のみ開放される「スマホ部屋」。最後は誰もいなくなった ■1日1時間の「スマホ部屋」効果? 参加者の一人、高校3年の横田壮真さん(17)は「中学の頃から不登校。でもネット上にはいろいろな友達がいて、みんな優しい。気づけば睡眠時間を削り、一日中オンラインゲームをしたりスマホが手放せない状態になった」。ただ、今の状態が好ましいとは横田さんも思っていない。「進路もあるので焦りや不安をいつも感じている」と打ち明ける。 <新型コロナウイルス禍による臨時休校で、子供たちのネット依存傾向は顕著になった。国立成育医療研究センターは、令和2年度から小中高生とその保護者を対象に「新型コロナウイルス感染症流行による親子の生活と健康への影響に関する実態調査」(郵送調査)を実施。昨年度調査(10~11月実施、子供1928人、保護者1991人)では、子供たちの約半数がネットを過剰に使用しており、約5人に1人がネット依存が強く疑われる状態に該当することが分かった」としている> キャンプでは、アウトドアクッキングやアユのつかみ捕りなどの川遊び、いも掘りなどの収穫体験を実施。体育館では皆が手をつないで立ち上がったり、フープ回しを行う遊びなど、さまざまなプログラムを用意している。一方で、年齢の近い兵庫県立大ソーシャルメディア研究会の学生12人がメンターとなり、子供たちの悩みに寄り添い、ネット依存に関する話し合いも行われる。 また、1日1時間のみインターネットが使える「スマホ部屋」を開放するのも特徴だ。ただ、その時間帯には、同時にバドミントンやドッジボール、箸づくりなどのワークショップも実施する。初日は参加者ほぼ全員がスマホ部屋に入ったが、数十分後には1人、また1人と抜けていく。2日目はスマホ部屋に入ったのは4人のみ。最後は誰もいなくなった。 オフラインキャンプを提唱する兵庫県立大学環境人間学部の竹内和雄教授は「本人たちもネットを使いすぎているとわかっていてもコントロールできないのが現状。自然の中でのリアルな体験や仲間とのふれあいによって、子供たちの意識は外に向き、自発的にネットとの付き合い方を学ぶようになる」と話す。