子供の5人に1人がネット依存…自らスマホを手放す2泊3日「オフラインキャンプ」の効果
■小さな目標を立てよう
ネット依存の問題に詳しい神戸大学大学院医学研究科デジタル精神医学部門の曽良一郎特命教授は「(自身の抱える困難な)問題に立ち向かえない人たちが安らぎを求めて依存症になるのはネットも飲酒もギャンブルも同じ。1人で解決するのは難しく、家族や外部のサポートが必要となる。ネットにはまる前の気分転換や日々の過ごし方はどうだったのか、親子がともに振り返って行動を起こすことが改善の一歩となる」と話す。
また、依存傾向にある子供にとっては、手が届きそうな目標を立てることも効果的だという。吉野町で開催されたオフラインキャンプの終わりの会では、子供たちは将来の夢のため、自ら考えた小さな目標を発表。「週に2日か3日は外に出る」「午前3時にはネットをやめる」「週に2回は学校に行く」「朝決まった時間に起きる」など。その成果は、来年1月に開かれるフォローアップキャンプで発表される。
こうしたオフラインキャンプは、医療機関などが主体となって全国各地に広がっている。竹内教授が吉野町をオフラインキャンプの会場に選んだ理由には、自然環境だけでなく、修験道の聖地であり、紀貫之や松尾芭蕉が吉野の桜を詠んだりと歴史や文化的な背景もあるという。
同町教育委員会生涯学習課課長補佐の紙森智章さんは以前、自身の長男がいじめで不登校になった。そのとき、紙森さんの友人たちが手を差し伸べたことで立ち直ることができたという。紙森さんは、「親でも友達でもなく、子供たちに寄り添える昔ながらの近所のおじさんたちのような存在として、吉野宮滝野外学校を育てていきたい。スマホ依存症改善は自然豊かな吉野で、と思われるよう今後も活動を続けたい」と話している。(木村郁子)