『まだまだ小さな一歩』夫が放火殺人事件の犠牲…なのに『無収入』とされ大幅減額 最低額引き上げも課題残る「犯罪被害者等給付金」踏み倒される「賠償金」立て替え制度も見送りで遺族「悔しくてたまらない」
過去事件の被害者への適用は見送り「まだまだ小さな一歩」
また、今回の改正では、過去に発生した事件の被害者への遡っての適用、「遡及」についても認められなかった。そうした点も踏まえAさんは「まだまだ小さな一歩だ」と話す。 「一歩前進ではあるけれど、まだまだ小さな一歩で、やはり改正案に目を通すと不十分な所もみられる。今回の改正では遡って適用されることはない。改正以前に起こってしまった遺族への救済や支援の拡充も今回の案の中には見つけられない。色々な立場・種類、被害者や遺族の人たちが明日を生きていこうと思えるような制度であってほしいと思うし、そうあらねばならない制度だと思う。小さな一歩として、これから改善・改正に向けて議論していく必要があると考えます」
踏みにじられる「賠償金の支払い」立て替え制度も見送り
給付金の最低額の引き上げが実現した一方で、犯罪被害者にとっての課題はさらに残っている。それは、加害者本人に命じられた損害賠償の支払いだ。 日弁連によると、加害者から支払われた賠償金の割合(2018年)は、殺人事件で13.3%、強盗殺人事件でたった1.2%と、加害者から被害者への賠償金はほとんど支払われていないのが現状だ。今回の改正の議論の中でも国による賠償金の立て替え払いなどについて議論されたが見送られたという。 会場にいた遺族の一人で、当時小学5年生の子どもを殺害された森田悦雄さんは、加害者に命じられた約4000万円の損害賠償の支払いを判決から5年がたった今まで1円も支払われていない。民法の規定では、民事裁判で得た判決の権利は10年で時効を迎え消滅してしまう。そのため、効力を失う前に遺族は支払いを求めていくには再提訴しなければならない。 裁判費用など遺族に経済的な負担がかかる一方で、立て替え制度が見送られたことについて、森田さんは納得がいかないと話す。 「今回立て替え制度について見送られたことについては、悔しくてたまらない。こんな形で私たちの事を国は本当に思ってくれているのかと。このままでは今後、再提訴をしなければいけない中で、裁判など費用がどんどん掛かってくる。今後どんな風に対応していったらいいのかと不安になる。今後も国に制度を作ってもらえるように訴えていくしかない」
【関連記事】
- ▼息子は馬乗りになられ刃物を何度も振り下ろされた…殺人事件で最愛の息子を失った父親 変わり果てた姿に「ごめんな」
- ▼「顔も腫れあがり、髪の毛もむしり取られていた」妹が殺され償いを求めた遺族 加害者へ賠償求めても全額払われず 相手の口座に残っていたのはたった“931円”
- ▼「小説ごときで娘は殺されたのか。絶対に、絶対に許さない。」「遺体を引き取って顔を見ました。そこで私は子守唄を歌いました」遺族らが青葉真司被告に伝えた"ことば"
- ▼「体はズタズタで見せられない」我が子を殺され苦しみ続く… 未だにない加害者からの「謝罪」と「賠償金」
- ▼住宅ローン4000万円『一括返済』求められ絶望「フラット35」で相次ぐトラブル